365 日クリニックををするために必要なことをにわかシミュレーションしてみました。
昨日は「365 日休診日がないクリニック」を見学してきた話をブログで紹介させていただきました。当院がもしこの「年間 1 日も休まない」を目指そうとするとどんな感じになるか、というシミュレーションをしてみました。患者さんからみて「院長がいつもどういうことを考えてクリニックを運営しているのか」が少し垣間見えるような内容になっていると思いますので、是非お付き合い下さい。
ひとことで 365 日診療体制、といっても実はかなり幅があります。
たとえば、
1. 通常診療を毎日稼働
このパターンはかなりハードです。医師・看護師・受付・検査・会計・電話対応・トラブル対応まで、平日と同じ品質で回す必要があり、なかなか難しいところです。多くの患者さんに対応しようとしても近隣の病院が休診となっているので緊急性をもって紹介する必要がある患者さんの対応に難渋することも懸念されます。
2. 日祝は短時間・急性期中心・処方継続など、内容を限定して診療
人手が薄い曜日帯は発熱・膀胱炎・急な皮膚症状・軽症の外傷などに絞る形です。ただし患者さんはこちらの思惑どおり病気になったり怪我をしたりするわけではありませんのでそんなふうに上手く行くかどうかはフタを開けてみないとわからないところが医療です。
3. 院長不在日を非常勤医師(パート医)で埋めるようにして診療を継続する
これができると “院長の根性” ではなく “組織としての 365 日診療” になるので、組織としての成長にもつながります。
つまり最初に決めるべきは、「365 日、何をどこまで提供するのか」です。ここを曖昧にしたまま「休まない」のは難しいので、仮に当院で導入するとすれば、発熱対応や外傷、若い患者さんのニーズがあるであろう皮膚科疾患診療あたりが日曜日に向いている診療内容になるでしょうか。
また、1 年ずっとオープン、という方針をとると、診療体制の整備よりもスタッフの労務が気になるところです。労働基準法上、原則として 1 日 8 時間・週 40 時間 の法定労働時間、そして 少なくとも毎週 1 日の休日、または 4 週 4 休 を確保する必要があります。かつての研修医生活のように「夜も休日もなくただ働け!」という時代ではありません(あれは辛かった・・・)。スタッフが善意で「大丈夫です、出ますよ」
と言わせたりしないクリニック運営をしないといけません。ということで、最低限以下が必要となります。「日曜・祝日勤務を前提にした就業規則・雇用契約の見直し」「36 協定(労働基準法 36 条に基づく労使協定。雇用主が法定労働時間(1 日 8 時間・1 週間で 40 時間)を超えて労働(残業)を命じる場合に必要)の確認」「変形労働時間制の導入可否」「休日手当・役職手当・代休ルールの明文化」「急な欠勤時のバックアップ体制」「有給取得が実際に可能なシフト設計」「院長・リーダーだけに負担が集中しない勤務表」などなど。考慮すべき点が多数ありますね。
また、勤務体制維持に必要なスタッフ数は(現在の 6 日診療を 7 日診療にするので単純に 7/6=1.16 倍、ではなく)、少なくとも 1.5〜1.8 倍のスタッフが必要となります。休診日をなくすだけでなく、スタッフの祝祭日や盆暮れも診療に当てることになるので、当然ながら「土日祝祭日休み」という社会の標準的な休日の分くらいはスタッフに休んでもらう必要が出てきます。現在祝祭日は年間 16 日、さらに年末年始が 6 日間にお盆の時期が 3 日と考えると、あわせて 25 日の休みを通常のシフトで得られる休みのほかに保証しなければなりません。さらに、診療を 365 日化すると以下の仕事が増えます。「土日祝に働く人の代休」「急な欠勤の穴埋め(休日だと皆さん予定を入れているのでなかなか対応しづらい)」「シフト作成・勤怠管理(AI でだいぶできる、といっても細かい添削をしないとなかなか平等なシフト表にならない)」「発注・清掃・検査機器のメンテナンスなど管理」「スタッフ教育」「非常勤スタッフとの情報共有」「院長不在時の対応などさまざまな "仕組み" 作成」などなど。つまり、診療時間を増やすと、診療そのもの以外の管理業務も増える。当たり前のことですが。
さらに、医療は本来あまりおカネ回りのことをどうこうしながら実践するものではないのですが、現実問題として先立つものがないとスタッフも雇えませんし、医療物品も購入できません。365 日診療は、患者数は増える可能性がありますが、クリニック単位でみたときの利益が増えるとは限りません。日祝は人件費が高くなりやすく、非常勤医師の報酬も高額です。検査会社・薬局・システム保守なども通常日と同じではなく、カバーがだいぶ薄くなります。
・・・とまあやはりかなりいろいろと考えるべきことが出てきますね。上記に挙げませんでしたが、クリニックの内装工事や水回りの点検、院内のエアコン掃除など、休診日があればまとめて終わらせられることも簡単にはできなくなります。現時点では当院はやはり日曜日と祝祭日は充電のために必要な時間と割り切り、診療時間に全身全霊をかけて臨みたいと思っております。ただ、こういったことを考えることで秦野北クリニックのサステナビリティー(持続可能性)を維持しながら進んでいくために大事なのは “院長がひたすら毎日がんばる” ではなく、“スタッフ全員が有機的・効率的に診療に関わり、組織全体で円滑に回っていく” こと、というのが改めて実感できました。院長やスタッフの体力を削って成立するような診療体制は厳に慎み、患者さんはもちろん、スタッフ・院長も前向きな気持ちで診療に向かうことができる "場" 作りをこれからも目指してまいります。
