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4 月に泌尿器科学会で参加したのと同じ会場でプライマリ・ケア連合学会 2026 に参加しました。

[2026.06.03]

2026 年 5 月 30 日・31 日、京都の国立京都国際会館で開催された「第 17 回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会」に参加してきました。今年のテーマは「つながる、つなげる。つなげる、つながる。」でした。コピーとして秀逸。まさにプライマリ・ケアという分野を表す、とてもよいテーマだったと思います。

「プライマリ・ケア」と聞くと、患者さんにとっては少し耳慣れない言葉かもしれません。直訳すれば「最初に受ける医療」「身近な医療」という意味合いですが、もう少しわかりやすく言えば、「何か困ったときに、まず相談できる医療」です。たとえば、発熱、咳、腹痛、頭痛、排尿のトラブル、血圧や糖尿病の管理、健康診断で異常を指摘された、なんとなく体調が悪い、眠れない、気分が落ち込む、介護のことが心配、家族の健康について相談したい……。こうした日常のなかで起こるさまざまな健康問題に対して、最初の入り口となるのがプライマリ・ケアです。

日本プライマリ・ケア連合学会は、プライマリ・ケアの理念として、近接性、包括性、協調性、継続性、責任性といった考え方を大切に、と啓蒙しています。つまり「通いやすい」「幅広く診る」「必要に応じて専門医や地域資源と連携する」「長く関わる」「説明責任を果たす」ということです。

学会に参加して改めて感じたのは、医療というものは、単に病名をつけて薬を出すだけでは完結しない、ということ。もちろん正確な診断と適切な治療は医療の基本です。しかし、患者さんは「病気だけ」を持って診察室に入ってくるわけではありません。仕事、家庭、介護、経済的な事情、年齢、性格、不安、生活習慣、地域とのつながり。そうした背景をすべて抱えたひとりの人間として受診されます。

たとえば同じ高血圧でも、「薬を飲めばよいですね」で終わる人もいれば、仕事が忙しくて通院が難しい人、介護で自分の健康管理が後回しになっている人、薬が増えることに強い抵抗感がある人、そもそも病気を自覚していない人もいます。同じ病名でも、必要な説明や支援は人によって違います。そこを考えるのがプライマリ・ケアの大切な役割となります

また、印象的だったのは、参加している医療者の幅広さです。医師だけでなく、看護師、薬剤師、リハビリ職、管理栄養士、医療事務、地域医療に関わるさまざまな職種の方々が集まっていました。病院勤務の先生もいれば、診療所の先生、在宅医療に力を入れている先生、へき地医療に関わる先生、教育や研究に取り組む先生もいます。

これは、プライマリ・ケアが「ひとつの専門科」だけではなく、「地域で患者さんを支えるための考え方」そのものだからだと思います。内科、整形外科、皮膚科、精神科、在宅医療、介護、予防医療。患者さんの生活のなかでは、これらはきれいに分かれていません。現実の困りごとは、いつも少しずつ混ざり合っています。

当院は泌尿器科を主標榜科としたクリニックですが、実際の外来では、排尿に関する症状や男性更年期についての相談だけでなく、発熱、倦怠感、生活習慣病、健診異常など、さまざまな「主訴(患者さんが来院される最も重要な訴えのこと)」をかかえて来院される患者さんに対応しています。極力しないようにしているのが「これは自分の専門ではありません」。と線を引くこと。専門医であることを楯にそれ以外の疾患のは簡単ですが、患者さんからすれば、「では、どこに行けばよいのですか?」という話になります。ですので、どうしても診られないな、という症状については少なくとも「近隣なら ◯◯ 病院 ▢▢ 科がに行くのがよいと思います」くらいの助言はさせていただくようにしています。「これは急ぐべきものなのか」「まず何を確認すべきか」「どの診療科につなぐのがよいか」「今ここでできることは何か」を判断することも、地域のクリニックに求められる大切な役割だと思っています。

今回の大会テーマである「つながる、つなげる。つなげる、つながる。」という言葉は、まさにこの役割を表しているように感じました。患者さんと医療者がつながる。クリニックと病院がつながる。医師と看護師、クラーク、薬剤師、介護職がつながる。医療と生活がつながる。そして、必要な人に必要な支援をつなげる。医療は、『ブラック・ジャック』の頃みたいにひとりの名医がすべてを解決する時代ではありません。もちろん医師個人の知識や技術は重要ですが、それだけでは不十分です。高齢化が進み、複数の病気を抱える方が増え、医療だけでなく介護や福祉との連携も必要になっています。そうした時代には、「自分の専門だけを深く診る力」と同時に、「全体を見渡してつなぐ力」が必要でしょう。

学会では、日々の診療にすぐ活かせそうな知識も多く得られました。たとえば、外来でよく出会う症状への対応、慢性疾患の管理、患者さんとのコミュニケーション、医療安全、地域連携、在宅医療、教育、チーム医療などです。プログラムには、気候変動と健康、サステナブルな医療、若手医師の育成など、これからの医療を考える企画も含まれていました。医学は日々進歩しています。診療を実践していくためのひとつの指標となるガイドラインも常に変わっていきます。医師は国家試験に合格したら勉強が終わり、というわけではありません。むしろ診療を続けるかぎり、学び続けることが生活の一部となっていきます。学会に参加する意味は、単に新しい知識を得ることだけではなく、他の地域で同じように悩みながら診療している先生方の工夫を知り、「自分のクリニックでもこうしてみよう」と考えるきっかけを得ることにもあります。このとき、同時に「日々の診療を少し離れたところから見直す」ことになります。どうしても忙しさに追われがちになる毎日の外来では目につかない、「秦野北クリニックはどんな役割を果たすべきか」「患者さんにとって相談しやすい雰囲気の作り方とは」「スタッフ全員がコミットするためのクリニック運営とは」などを考える良い機会になります。

ときに典型的な経過・所見とはいえない患者さんの症状。AI がどんどん利用されるようになっている現在だからこそ、「なんとなく調子が悪い」「どこに相談してよいかわからない」「年齢のせいかもしれないけれど心配」「ネットで調べたら怖くなった」。そうした段階で相談できる場所として、当院を考えていただければ幸い・・・、などと考えた学会参加でした。

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