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5 年に一度の専門医・指導医更新を終えての雑感。

[2026.09.02]

先日、日本・米国・欧州(英国)の専門医制度について書いたときがありました。日本の専門医制度は、「多くの医師が取得可能だがそのプレミア感(取得していることに対する実質的なメリットみたいなもの)は他国に比べてそれほど多くない、みたいなことを書いたりして。こういった制度には必ずといってよいほど(国家公務員の方が天下るためなのでしょうか)"ハコモノ"(専門医の場合は「日本専門医機構」)が新しくできるのも少しネガティブな印象があります。ホームページをみるとエラい先生方が多く名前を連ねており、あまり批判は「物言えば唇寒し」なのでやめておきますが。

そんなこんなですがつい先日、「日本泌尿器科学会専門医・指導医」の更新が終了しました。5 年に 1 回の更新であり、なんだかいろいろな書類を準備した記憶があります。

現在日本の医師免許は更新がなく、重大な犯罪などを起こして免許取り消し等の行政処分を喰らわない限りは生涯医師でいられますが、専門医・指導医という資格は、一定期間のなかで必要な単位を取得し、継続して研鑽していることを示しながら更新していく必要があります。医療は進歩しつづけていきますので、こういった資格に定期的な更新制度があり、継続的な学習を求めること自体、まったく異論がありません。

ただその一方で、以前から少し気になっていることがあります。それは、学会が「勉強をする場所」ではなく、「単位を取りに行く場所」になっている、ということです。

若い頃の自分にとって「学会発表・参加」は純粋に "学びの場" であり、"他の施設の先生方と会場で議論する場" でした。院長が医師になった 2001 年。この頃はすでにインターネットはありましたがまだまだ情報量としてはテキストベースで、動画はおろかイラストを見るのにもずいぶん時間がかりました。そのためなにかあたらしい情報を取りに行くにはどうしても「現地に行く」というアクションが必要。そのため学会場は「自分の研究に関係する発表を聞きたい」「この分野はいまどうなっているのだろう」「新しく発売された新薬のリアルワールドデータ(臨床試験の成績ではなく、実際に医療現場で治療薬として使われたときの成績)はどんなものか」みたいな情報を積極的に取りに行く場所として存在していたように記憶しています。

しかしながら、インターネットによる情報量があふれるほど多い現代、もはやそういった魅力的な場所ではない、専門医の更新や指導医を維持するための "やむなく出席する" 雰囲気がある学会(特に国内学会)も存在します。残念ながら。専門医などの資格更新に「学会参加◯単位」「講習受講▢単位」という仕組みが加わると、どうしても人間の心理は「今年はあと何単位必要だったかな」「この講習を受ければ何ポイント入るのだろう」「この学会に参加しておけば更新要件を満たせそうだ」・・・と変わっていき、気がつけば学会会場が巨大な「ポイントラリー会場」のようになってしまいます。・・・なんだか少し寂しいですね。

しかも最近は本当に学会が多い。先日『日経メディカル』の記事で出ていたのですが、日本内分泌学会には分科会があり、それらを列挙すると、日本甲状腺学会・日本神経内分泌学会・日本生殖内分泌学会・日本ステロイドホルモン学会・日本心血管内分泌代謝学会・日本臨床内分泌病理学会と、外部のひとからみたら「同じ内分泌系ならひとつにまとめろよ」と言われそうなくらい、"学会数が多すぎる問題" があります。これは院長の専門である日本泌尿器科学会も同じで、細かくいくつもチョコチョコ開催するのではなく、「日本泌尿器科学会総会」を 1 週間くらい長きにわたって開催し、必要に応じて参加するようにしたほうが効率がよいように思います。私見ですが、今後学会は統合または合同開催を進めていくべきでしょう。

専門医とはどういう医師か。大学病院に在籍して学会のシンポジストになって論文を数多く発表している先生はたしかに専門たるにふさわしいかもしれません。しかしながら、朝から晩まで患者さんを診療している地域の開業医であっても、診療の途中でわからないことがあれば、その場で自分の持っている文献を調べる、珍しい病態にあたれば論文を読みこむ、処方した薬について最新の安全性情報を確認する、紹介先の病院から戻ってきた患者さんの診療情報提供書をくわしく読んで経過を記載する、自院のデータをまとめる、最新の知識を得るために近隣の総合病院で開かれている症例カンファレンスに出席する、夜にはその日の患者さんについてもう一度考える・・・。こういう日常こそ、実際は濃密な専門医維持のための生涯講習のような気がします。

さらに開業してからは「患者さんを診るために学会へ行けない医師ほど、資格更新上は不利になる」という矛盾をひしひしと感じるようになりました。開業医は勤務医と異なり、患者さんを診ることでクリニックの経営を維持しております。院長が学会に多く参加すればするほど当院は休診日が増え、経営面ではマイナスが増えていきます。これはどこか本末転倒ではないでしょうか。学会は医師・専門医を会場に集めることではありません。良い医療を患者さんに届けることのはずです。

一時期「増やせ増やせ」の大号令だった医師数も、人口減少社会突入により頭打ちとすべき、と方針が異なり、今後ますます医師のありかたが社会のなかで問われていく時代になっていくと思います。そんななかで「専門医」とはどうあるべきか、そして専門医が担うべき医療とはどういうものか、今一度議論する必要があるような気がします。

・・・次の更新にあたる 5 年後の 2031 年にはたして日本の専門医制度はどうなっているでしょうか。そして医療そのものや秦野北クリニックもどうなっているのか。ダーウィンの言葉というわけではないようですが、よく「最も強いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る」と言われます。旧態依然としてなかなか改革が進まないといわれる医療業界ですが、医療は国民の幸福度にきわめて大きく関わる一大産業です。ドラスティックな変化もそろそろ必要なのではないでしょうか。その変化が日本の医療に大きなプラスとなるものであれば、院長は必要ならば自分の身を切る覚悟はあるつもりです。まだまだ医療業界で生きていきたいと思っていますので。

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