X であるツイートをみていたら「むかし自分が若手のとき味わった "テクニカルタームの壁" もまあ無いと困るんだなぁ」と思った件。
ときどき医療従事者でない方から「医学部は 6 年も通うんだから、医者になったときは一人前なんでしょう」みたいなことを言われることがあります。・・・これは残念ながら大間違いで、大学を卒業して(院長が医師になったときは制度としてはなかったですが)研修医になっても、臨床的に役立つことはほとんどできません。これは以下のような原因が挙げられます。
まずは医学教育制度などのハードの面では
-
座学中心の教育で知識偏重の教育が多く、実際の患者対応の経験が乏しい。そのため身体診察・問診・手技(静脈確保、採血など)に慣れていない
-
ひとつひとつの疾患に対する治療は答えられることができても、臨床で重要なのは診断(診断が誤っていれば治療は当然間違えてしまう)。教科書的知識はあっても、それを現場で応用する力が乏しい(たとえば腹痛で来院された患者さんを診断するためにどのようなことを問診するのが効率的かがわからない、など)
-
患者対応スキルが未熟で、コミュニケーション、説明、同意取得などに不慣れ
-
医学生はしばしばいわゆる "優等生タイプ" のひとが多く、看護師、薬剤師、リハビリスタッフなど協力が必須な他業種職との協調性が乏しい
つぎに心理的な面で
-
臨床現場への不安や恐怖:命を扱う責任の重さに圧倒され、積極的になれない
-
自信のなさ:自分の判断に自信を持てず、行動が遅れる・萎縮する
-
ミスを恐れて受け身になる:主体的に動くよりも「教わる側」にとどまってしまう
制度や環境的なことで言うと
-
卒後教育の質のバラツキ:研修病院の教育体制や指導医の熱意に大きく左右される。
-
責任が限定されている:研修医のうちは基本的に監督下で動くため、主体性が育ちにくい。
-
臨床以外の業務に追われる:カルテ入力、書類作成、直接診療とかかわらないルーチン業務で時間を取られ、学びの余裕が少ない。
ほかにも卒後教育の整備が不十分、とか、むかしの因習というか、昭和の職人のように "見て覚えろ文化" が残っていて、OJT(仕事しながら、実務のなかで業務を覚えていくスタイル)のために体系的な学びを得られにくい、など、いろいろな面があります。
そのなかでひとつ、なんとなく X を見ていたら下のようなポストが目に入りました。専門用語。なるほど。医療業界は(ほかの業種もそうかもしれませんが)専門用語(テクニカルターム)がやたら多い。特に手術に関連する盤面でそういった用語が目立つ印象があります。
明日はそういった「テクニカルタームがだいたい身につくまでに 2-3 年必要だった」院長が経験したエピソードを紹介します。"プロイラ" "ウンビリ" "アペックス" "レトロ"・・・。手術に関する様々な用語が飛び交うカンファレンスで最初はだいぶ苦労した苦い経験を。
