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血尿

尿に血液が混じっている状態を「血尿」と呼びます。血尿の原因となる疾患は様々で、われわれ泌尿器科医は血尿の患者さんを診察するとき、年齢や性別、痛みをともなうかどうか、血液をサラサラにする薬を飲んでいるかどうか、などさまざまな点について考えながら検査や治療を考えていきます。

以下、泌尿器科医がどのように考えていくか、実際に診察をするようにこの症状について説明していくことにします。


まず血尿で初診された患者さんを診察するとき、泌尿器科医は血尿をその程度によって 2 種類に分けて考えます。ひとつが肉眼では見えないものの、尿を顕微鏡で見ると赤血球が見える「顕微鏡的血尿」で、もうひとつが肉眼で赤い尿が確認できる「肉眼的血尿」です。「肉眼的血尿」では通常尿が 1 リットルあると、その中に血液が 1 mL以上含まれており、この数値はそのまま定義にもなっています。


すなわち、顕微鏡的血尿は学校や職場の健康診断などで指摘されて紹介されるケース、肉眼的血尿は患者さんご自身が症状に気づいて受診されるケースが多くなります(一般に血尿というと肉眼的血尿を指すことが多いです)。
どちらが重大かは一概には言えません。明らかな肉眼的血尿は、初めてその症状に気づいたときに患者さんはびっくりしますが、比較的早期の膀胱がんであることもしばしばありますし、一方で一見尿の色は問題なくても顕微鏡的血尿があり、詳しい検査をした結果に腎臓の腫瘍がみつかることもあります。いずれにしても血尿を放置しておくと、重大な病気につながる可能性があるため、しっかりと検査を受ける必要があります。


血尿の原因

血尿の原因は、尿路結石症、悪性腫瘍(がん)、尿路感染症の 3 つが主なものです。それぞれ説明します。

 

尿路結石症

泌尿器科の病気として有名な尿路結石ではしばしば血尿がみられます。尿路結石には、尿管結石、腎結石、膀胱結石の 3 つが代表的なもので、尿管・腎結石は性別問わずみられますが、膀胱結石をもつ患者さんのほとんどは男性です(女性の膀胱結石は、以前に施行した骨盤内手術の影響・長期の尿道カテーテル留置・神経系の疾患により排尿障害を来しているとき(★)など、明らかに原因を特定できることが多いです)。これらの結石はすべて血尿の原因となります。これは結石が尿管、腎臓、膀胱の上皮に接触して上皮を傷つけ、出血することで起こります。尿管結石は、血尿のほかに激しい腹痛や背部痛を引き起こすことがあります。腎臓結石はあまり痛みを伴いません。膀胱結石は、残尿感や頻尿などの膀胱に関連する症状を伴います。

尿路結石症における血尿は尿路(尿の通り道全般を示す用語)である腎臓・尿管・膀胱・尿道いずれかの粘膜を結石が接触して傷つけ、出血することで発生します。

 

悪性腫瘍(がん)

言うまでもありませんが非常に危険な病気であり、血尿の患者さんが来院したときわれわれ泌尿器科医は、「がんではないだろうか?」と一応は考えて診療を進めていきます。がんの組織やその内部にある血管はときに非常にもろく不安定であるため、尿路にできたがんの組織がなんらかの刺激(体を動かす、くしゃみをする、歩くなどどんな行動でも)によりこわれてしまうと出血し、血尿にいたります。血尿、特に肉眼的血尿をきっかけに発見されることが多いがんは膀胱がんで、このがんの血尿の特徴として痛みなどの症状を伴わない「無症候性肉眼的血尿」が多いです。他に腎盂・尿管がんや前立腺がんなどの泌尿器がん、頻度は少ないものの、子宮がんや大腸がんなど泌尿器科以外のがんでも腫瘍が大きくなり尿路に進行することで血尿を生じることがあります。次に述べる膀胱炎と関連するところで言うと、「膀胱炎かと思ったら実は膀胱がんだった」というケースは決して少なくありません。「症状は膀胱炎そっくりだが抗菌薬で症状が改善しない」「膀胱炎の症状はあるが、そのなかで血尿の程度が強い」「男性で膀胱炎のような症状が出ていて発熱や排尿時痛がない(膀胱炎は男性に少なく、その場合は前立腺炎を考えるのですが、前立腺炎ですと発熱や排尿時痛がみられることが多いです)」・・・などのケースでは積極的に悪性腫瘍を考えます。

 

尿路感染症その他

尿路感染症で最も多いのが急性膀胱炎で、頻尿や残尿感・排尿時痛(特に排尿の終わりに痛みが強くなるので特に排尿 "終末時痛" が症状の特徴です)などの症状とともに血尿がみられます。これは膀胱内で細菌が増殖して膀胱粘膜に炎症をきたした状態で、からだの免疫力が低下している場合や尿の出口(外尿道口)が不潔なときに発症しやすいとされ、患者さんのほとんどが女性です。また、膀胱炎の原因である膀胱内の増殖した細菌がさらに体の深部に入り込み、尿路の上流である腎まで達すると急性腎盂腎炎と呼ばれる病態となり、このときも血尿が見られることがあります。ただしこの場合は発熱や全身倦怠感(全身のだるさ)、側腹部痛(脇腹の痛み)など、他の症状をともなうことが多いです。男性の尿路感染症で比較的多くみられるのは前立腺炎や精巣上体炎ですが、これらの病気で肉眼的血尿がみられることは少なく、顕微鏡的血尿がときに見られます。以上から、尿路感染症の血尿は急性膀胱炎、すなわち女性の患者さんで多くみられる、ということになります。

その他、血尿を生じる病気として、腎臓のより深部の異常で「糸球体腎炎」と呼ばれる疾患や、腎動静脈奇形やナットクラッカー症候群などの血管の先天的・後天的異常があります。比較的まれですが、血液をサラサラにする薬を(特に複数)内服している方が、その薬の影響により血尿をきたすことがあります。また、女性については生理時の月経出血が血尿と紛らわしいときがあったりもします。さらに介護中などで尿道カテーテルを長期留置されている方などで慢性的な膀胱の炎症が原因となり血尿をきたすことがあります。いずれにしても血尿に気づいたり、検診で血尿と言われたら原因を特定して治療につなげるため、是非泌尿器科や腎臓内科・一般内科を受診することをお薦めします。

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