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前立腺肥大症

前立腺肥大症とは

前立腺は、男性の生殖器官の一部であり、尿道の周りに存在しています。
前立腺は、尿道に分泌物を出し、精液の成分を作る役割を持っています。

前立腺肥大症とは、文字通り前立腺が肥大して、様々な排尿の症状を引き起こす疾患です。
前立腺が肥大するメカニズムは完全にはわかっていませんが、男性ホルモンなどの性ホルモン環境の変化が関連すると言われ、加齢に伴って発症します。
早い方だと 40 歳代後半から、多くは 60 歳代から頻度が高くなってきます。
性ホルモンのほか、遺伝的要因、食生活、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常が発症に関連するという研究があります。
前立腺は男性にしかありませんので肥大症も男性にのみみられる疾患です。

(前立腺肥大症の模式図)

前立腺肥大症では、排尿症状(「排尿に時間がかかる」「尿の勢いが弱い」ことをはじめとする、尿を出すことに関連する症状)、蓄尿症状(「排尿してから次の排尿までの時間が短い」「急に排尿したくなってしまう」「夜何度も排尿のためトイレに行く」などの尿をためておくことに関連する症状)、排尿後症状(「排尿したあとに尿の出口からタラタラと尿がこぼれてしまう」などの排尿した後に出現する症状)がみられます。
最も激しい症状として尿閉(膀胱にたまった尿が出せなくなった状態で、非常に大きな苦痛を伴います。
この状態になるとほとんどの患者さんは七転八倒して医療機関を受診されます)、最も生涯にわたって影響する病態として腎後性腎不全(尿閉またはそれに準じる状態が月単位・年単位で継続して水腎症とよばれる腎機能低下状態が続き、最終的に腎臓の機能が不可逆的なダメージを受けた状態。
こうなると透析が必要になるなど、生活の質が極めて大きく低下します)があり、このような病態にならないよう早めに泌尿器科専門医を受診していただければと思います。

前立腺肥大症の検査

まずはアンケート形式で患者さんの症状を評価します。
前立腺肥大症の重症度を評価するのに最もよく使用する質問表が国際前立腺症状スコア(IPSS)で、8 点以上が中等症、20 点以上が重症と判断され、治療方針の参考とします。
前立腺肥大症だけではなく過活動膀胱など他の排尿関連疾患においても非常に参考になるスコアなので、当院では排尿に関する症状を訴えて受診されたすべての患者さんに、IPSS を性別問わずお願いしています。

(国際前立腺症状スコア IPSS)

尿検査

尿路感染症、糖尿病など他の疾患が隠れていないか確認します。

血液検査

腎機能が低下していないか確認したり、前立腺にがんができていないか評価するために採血を行います。
前立腺肥大症かと思ったら前立腺炎や前立腺がんだった、ということはときに経験されますのでそのあたりの検査値を評価します。

尿流量および残尿測定検査

超音波は放射線の被爆がなく簡便で、泌尿器科学的評価に欠かせない画像ツールです。
前立腺のサイズや膀胱の形態、ときには前立腺がんを疑わせるような病変も指摘可能です。
おなかから前立腺を観察するときは仰向けで下腹部から、直腸から前立腺を観察するときは横向きに寝てもらい(側臥位)肛門から超音波検査機器をいれます。
後者は肛門から超音波検査機器を入れますので、患者さんの苦痛は前者に比べて大きいですが、このやりかたのほうが前立腺を細かく評価することができます。
どちらの方法も前立腺を観察するだけなら 2-3 分で終了します。

前立腺肥大症の評価

上記のような検査を行い患者さんの排尿状態を評価したあと、治療が必要となった場合は下記のような治療が行われます。
前述したような尿閉や腎後性腎不全の危険性が低ければ、治療が必要になるかどうかの判断で最も重要なのは「患者さんが前立腺肥大症による症状で生活に困っているか?」「患者さんが治療を希望するか?」です。
是非主治医に「現在の排尿状態でどの程度生活に影響が出ているか」を伝えるようにしてください。

前立腺肥大症に対して患者さんご自身が実践できる症状緩和に良いとされること

どれも確実な医学的根拠が乏しく、箇条書きで示すにとどめておきますが、効果はありそうなものを記載しておきます。

  • 過剰な水分摂取を避ける。体重(kg)x 20 (cc) くらいの水分(食事中の水分を含まない)が適当という報告があります。
    もちろん汗をかいたらその分は補充しましょう。
  • ふくらはぎを使う運動(軽いジョギング、散歩、下半身のヨガなど。下腿に滞った水分を上半身に戻し、特に夜間頻尿を改善すると言われております。
    時間帯としては夕方に行うのがよいといわれています。
  • 過剰な塩分摂取を避ける(摂取カリウム量にもよりますし、発汗量などにもよりますが、1 日 8-10 g 以下でしょうか)
  • アルコールを控える(休肝日に夜間頻尿が少なくなる印象がある方がいましたらこれは有効です)
  • カフェイン(コーヒー、お茶、コーラなど)の過剰摂取を避ける
  • へそより下半身、特に靴で隠れる部分を冷やさない)
  • 長時間の坐位を避ける(1 時間座ったら 5-10 分は歩くなど)
  • 院長の個人的な印象ですが、前立腺肥大症改善を宣伝するサプリメントは費用対効果が低い(購入金額に見合う効果が得られづらい)と思っています。

前立腺肥大症の治療

薬物治療

まずはじめに行われるのがお薬による治療で、代表的な薬が交感神経α1遮断薬とホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬です。
α遮断薬(アルファブロッカー)(ハルナール®、フリバス®、ユリーフ®など)は、前立腺平滑筋を緩めて尿の通り道で肥大した前立腺による圧迫を解除して、尿が通りやすくします。
また、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)(ザルティア®)は、勃起不全に使用されている薬ですが、前立腺や膀胱の出口の平滑筋を弛緩させて、尿を通りやすく作用があることが示されて、前立腺肥大症にも投与されるようになりました。

上記のほか、抗男性ホルモン薬(アボルブ®など)は、前立腺を小さくして(1年の内服で前立腺サイズが 25~30% 縮小するといわれています)、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を軽減する作用があり、アルファブロッカーで有効性が低いケースや初診時から極めて大きな前立腺でアルファブロッカーのみでは治療効果が十分に得られないと予測されるようなケースで使用を検討します。
その他、植物から抽出したエキスを薬にした生薬や、院長が行う専門診療のひとつである漢方薬も前立腺肥大症治療に有効なものがあります。

また、急に尿をしたくなる蓄尿症状を尿意切迫と言い、過活動膀胱の代表的な症状ですが、前立腺肥大症の患者さんの50~70% が過活動膀胱を合併します。
この場合はアルファブロッカーなどで十分に排尿症状を改善したうえでβ作動薬や抗コリン剤などの過活動膀胱治療薬を併用することを検討します。

院長はこれまでの経験上、前立腺肥大症の 70-80% くらいは薬物治療で生涯コントロールできるという印象を持っています。

手術治療

薬物治療を行っても、症状が十分に改善しないケースや、尿閉を繰り返す場合、あるいは前立腺肥大症の残尿が原因と思われる膀胱結石が形成されたり、腎機能障害が発生した場合には手術治療が検討行されます。
院長が研修医だった 2000 年代はじめは 100 cc を超えるような大きな前立腺肥大の場合には、開腹手術によって肥大した前立腺を摘出することがありました(14 例の経験があります)が、これはときに 1000 cc 以上の大出血をきたすことがある負担の大きい手術で最近はめっきり行われなくなりました。
多くの場合、手術治療は尿道から内視鏡を挿入して行われます。
最近では、レーザーを用いた、新しい内視鏡手術も行われています。
当院で手術が必要と判断された患者さんについては近隣の秦野赤十字病院様をはじめとする手術可能な施設に紹介いたします。

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