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5 月になっても来院される "いわゆる◯◯" の患者さん、しかし本当に "◯◯" かどうかは 1 週間くらい経過してみないとわからないことがあります。

[2025.05.15]

「先生、風邪だと思うんですけど…」このセリフ、クリニックでは 1 日に何度も耳にします。発熱、咳、喉の痛み、鼻水…。確かに、典型的な風邪の症状です。

でもちょっと待ってください。その “風邪っぽい” 症状、実は風邪じゃない可能性もあるんです。有名な "UpToDate" という、医療に関する様々な知見がまとまっているサイトがあるのですが、そこには風邪について

"The common cold is a benign self-limited syndrome representing a group of diseases caused by members of several families of viruses." と記載されております。訳すと「勝手に治る病気で、いくつかのウイルスが原因になるもの」ということです。この「いくつかのウイルス」を挙げてみるとライノウイルス、コロナウイルス(新型ではないもの)、パラインフルエンザウイルス、RS ウイルス、アデノウイルス・・・など、実に多彩(数百種ともいわれる)で、なかなか症状だけで「ライノウイルスですね」とかは言えません。つまり、風邪と一口に言っても、実際には**たくさんの種類のウイルスによる“症候群”**のようなものなんですね。

典型的には「のど」「はな」「せき」の 3 症状が "同じような時期" に、"同じような強さ" で出現する、という特徴があります。逆に言うと、これら 3 つが揃っていなかったらあまり安易に「風邪です」とは言えません。これは診察時にすごく重要で、風邪によく似た症状を示す疾患は結構たくさんあります。

(1) インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症・溶連菌感染症など

「熱がある」「喉が痛い」「関節が痛い」──典型的な風邪のように見えても、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症であることがあります。さらに、溶連菌(A 群 β 溶血性連鎖球菌)は抗生物質が必要な病気で、ただの風邪と見分けをつけないと重症化リスクがあります(特に小児や高齢者)。これらは病初期に症状の違いがわかりにくく、「風邪かと思ったら肺炎だった」というケースもあり、経過を追うことが必要です。

(2)咳喘息・百日咳・新型コロナウイルス後遺症

「風邪の後、咳だけがずっと残るんです」と言われる方、多いです。これ、実は咳喘息や、あるいは百日咳のことも。あとは新型コロナウイルスの後遺症で咳ばかり残る、という患者さんもときにいらっしゃいます。このあたりも経過を追うことが必要です。

(3)花粉症(アレルギー性鼻炎)など

「透明な鼻水がずっと出て…」「喉がイガイガするんです」──これ、花粉症や通年性アレルギー性鼻炎のこともあります。特に「自分は花粉症ではない」と思っている患者さん(=すなわち "今年発症した" ひと)は、まさか自分の症状が花粉によるものとは思っておらず(思いたくない?)、初期の症状は発熱を除いて風邪とそっくりなので、「風邪です」と言って来院されることが多いです。花粉症は季節の変わり目や空気が乾燥する時期に起きやすいので、時期的にも風邪と紛らわしい。

となると、どう診断するか。ここで重要なのが「風邪の自然経過」です。風邪は多くの場合は潜伏期が半日くらい(ときに 1-5 日くらいのこともありますが)で、症状は「のど」「はな」「せき」です。しかし、発症後、「のど」症状は比較的早く改善し、全体の症状についても 2-3 日でその程度はピークアウト(ツラい症状のピークを迎えて楽になっていく)していき、7-10 日目には 70% 以上のケースでほぼ「治癒」します(これまでの報告ですと 20-25% くらいが 2 週間続く(高齢者や体調悪いのに無理をしたひとに多いとされる))。ですから何回も太字で書きますが経過を追うことが必要なんです。

随分前に院長が経験した「風邪と思ったが実は違った」という患者さんを思い出してみると・・・

  • 後期高齢者男性。7 日前に咳、5 日前に 37.5 ℃ 発熱、その後受診前日に 38.6 ℃ の発熱を認め粘稠(ねんちょう:ネバネバ)な痰も出現 ⇒ 肺炎
  • 若年女性。鼻水や咳がないのにひたすらノドが痛い ⇒ 淋菌(性感染症)性咽頭炎
  • 若年男性。7 日前に咽頭痛と 37.5 ℃ 発熱。その後 3 日前に頭痛出現。頭痛出現時から発熱 37.6 ℃ 以上が続き、咽頭痛は改善したが頭痛と発熱が改善しない ⇒ 髄膜炎

なんてことがありました。とにかく、経過を追うことが必要、ということをわかっていただければ嬉しいです。

また、意外かもしれませんが、「高齢者になるほど風邪を惹かなくなる」というデータがあります(下図 Plos One 2014)。おそらくこれは「長年の人生でいろいろな微生物に暴露されることで少しずつ免疫ができていく、ということと考えられています。ですので、例えば 85 歳の方が当院に「風邪かも・・・」と言いながら来院された場合は「風邪ではないのでは・・・?」と考えながら診察させていただきます。新型コロナウイルス感染症だったりしますので。

風邪は、誰もが一度は経験するごくありふれた病気。けれど、その背景にはたくさんの「似て非なるもの」が潜んでいます。医師の立場から言えば、風邪を “見極める” ことは決して簡単ではなく、経過を追うことが必要な奥が深い病気であることをアタマの片隅に置いてくれれば嬉しいです。

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