マイクロプラスチックによる影響と対極にある池田輝政がかかったとされる病
マイクロプラスチックという言葉を知っているでしょうか?マイクロプラスチックは、直径 5 mm 以下の小さなプラスチック粒子のことを指します。自然界に廃棄されたプラスチック製品などが自然界で破砕されたりして形成されたもので、これを小魚が食べさらにその魚を大きな魚が食べ最終的にヒト体内に取り込まれることでヒトの体内環境が乱される、という報告があります。
このマイクロプラスチックがなんとヒトの陰茎から検出された、とする論文が『IJIR: Your Sexual Medicine Journal』で報告されました。この研究グループは今年の 5 月にヒトの精巣から比較的多量のマイクロプラスチックが検出されたことを報告したばかりでした。マイクロプラスチックは主要臓器の細胞や組織に浸潤する可能性があり、そうなった場合は性機能の低下やリビドーの減退など様々な影響が期待されます。
これと全く対極にある疾患概念が、古い文献に出てくる「腎虚」です。これは戦国・江戸時代では「性交渉をやり過ぎてかかる病」とされ「過陰」とも別名されました。豊臣秀吉の死因は天下統一により女性を自分の気の赴くままに求めた結果の腎虚による、と記載されている文献もあるように、戦国時代には腎虚は大名など権力者には比較的多くみられたようです。
先日紹介した武将のひとり、池田輝政もその死因が腎虚とする文献が残されております。輝政は父・兄を小牧・長久手の戦いで徳川軍で討ち取られて家督を継ぎましたが、その後戦国末期を力強く息抜き、徳川家康の娘と結婚するなど人の縁もあり、最終的に姫路城を有する播磨国姫路藩の初代藩主となった大名です(姫路城を現在残る姿に大幅に修復した人物でもあります)。
輝政は 11 男 3 女を授かるほどいわゆる「精力」が強く、直接死因は当時の文献『当代記』に「中風(脳卒中などを指す)」とありますが、その一因は「腎虚」であったということです。
「生きるか死ぬか」の戦国時代を生きるためには強い精力と、お家のために多くの子を設ける必要がありますので腎虚になるような夜の生活が必要だったのかもしれません。
「草食系」が多くなったと言われるわれわれ現代人を戦国時代のひとがみたらどんな感想を持つのか。想像すると面白いですね。
ちなみに現代の漢方医学で「腎虚」と言ったら「主に加齢にともなう諸症状」を指すことが多く、よく使われるお薬は八味地黄丸です。泌尿器科には排尿障害の患者さんが多く来院されますが、そういった方に頻用するのがこの方剤ですのでもし「年を取って最近◯◯になったなぁ」みたいな症状があったらぜひご相談ください。
池田輝政の肖像画。写真は Wikipedia より。