「偉大な巨人の肩」に乗って日々診療しています
最近、歴史はあまり若者に人気がないそうです。高校 2 年くらいまでは歴史学者になりたいと思って中央公論社の『日本の歴史』26 巻を 18 歳までに読破したことが自慢の院長にとっては残念な話です。
日本の最高学府といわれる東大でも 3 年次からの専攻を決める「進振り」において、文学部の中で日本史学科・東洋史学科・西洋史学科などはあまり人気がない、と有名な本郷和人・東大教授がネット記事に書いておられました。
「歴史からは学ぶものが少ない」、「歴史はあまり役に立たない」、「グローバルに生きるのに日本史は必要ない」・・・はたして本当にそうでしょうか。
現代に生きるわれわれが快適に過ごせるのはすべて数学や物理・化学や生物はもちろん、文学や地理学、天文学や哲学などで素晴らしい業績を残してくれた先人たちのおかげです。イギリスの 2 ポンド硬貨に、ニュートンの有名な言葉で院長が青春時代に愛聴していたブリティッシュ・ロックバンド・オアシスの 4 枚目のアルバム・タイトルである "Standing on the shoulders of giants (巨人達の肩の上に立って、すなわち自分の発見は偉大な先人の業績に基づいている、ということ)" という刻印があります。ニュートンのような天才も、新しい法則を見つけるために先人の業績を勉強していたということでしょう。
特にわれわれが日々実践している医療はすべて先人たちの素晴らしい業績のおかげで成り立っています。歴史は暗記科目でも単なる事象の羅列でもなく、「人間がこれまでに営んできた足跡の貴重なデータベース」であり、人類がどのように歩んできたか、すなわち「来し方」を知り、さらに人類の未来、すなわち「行く末」を考えるのに極めて重要な学問と思います。
すべての子供達に興味を持ってもらうのは難しいかもしれませんが、先人と同じような大きな失敗を繰り返さないよう、人間は歴史を最低限知っておく必要があるのではないかと考える院長でした。
写真は 1964 年初版の東京大学と順天堂大学の解剖学教授を歴任した小川鼎三 先生 著・『医学の歴史』(中公新書)38 版(1993 年)です。院長は医学部受験の小論文対策として読んだのですが、平易なを文章で書かれておりアタマに入りやすかったことを覚えています。久しぶりに読み返してみましたが、発刊後 60 年(!)経過した今でも購入可能のロングセラー新書であることが頷ける一冊です。