ブタ腎臓をヒトに移植した患者さんが無事退院!
院長をはじめ、泌尿器科医が腹腔鏡手術を手掛けるとき、まず準備として行うのがブタ腎臓摘除の手術です。
現在は動物愛護の観点からブタを用いることはハードルが高くなりました(これはとても良いことだと思います)が、20 年程前は比較的容易にブタの手術を若手外科医のトレーニングに使用させていただく、ということが行われていました。
当時院長が思ったのは「ブタの腎臓はヒトのそれと非常に似ている、いや、それ以上に美しい」ということです。たいてい子供のブタが利用されることもあり、腎周囲脂肪組織も少なく血管に動脈硬化などもないため、大変「キレイ」な腎臓であったことをよく覚えております。
先月、世界に冠たる一流施設、米国のマサチューセッツ総合病院で、末期腎不全の治療としてブタ腎臓移植が行われ、無事その患者さん(60 代) が退院されたそうです。ブタ腎臓の患者への移植は世界初で、一時的に拒絶反応が起きたが治療を受けて順調に回復してきたそうです。
かつて日本の宇和島徳洲会病院に万波誠先生(故人)という、「病腎(腎がんで摘除された腎をほかの患者さんに)移植」を行っていた医師がいました。これはアイディアとしては極めてオリジナリティが高く、科学的・倫理的な手順を踏んでいれば興味深い臨床研究になったと思いますが、万波先生はそういった手続きを踏まずに施行していたため、世間から大変批判されました。
ブタ腎臓を人に移植する「異種移植」も万波先生のように種々の手続きを踏まずに行われたとしたら、世間からの非難は免れなかったことは間違いありません。
現在、小さなものであっても臨床研究を行う場合は倫理的に認められるか否かを倫理審査委員会に諮り、承認を受ける必要があります。当院は小さなクリニックですが、手続きを踏めば近隣の大学病院などにおいても倫理審査を受けることが可能です。
開業して 1 年、今後はただ臨床業務を行うだけでなく、秦野から日本、できれば世界に通じる論文・研究を 1 つでもよいので発信していければと思っております。
2007 年、癌研有明病院で腎がんにおける染色体分析の研究を行っていた頃の院長です。相当疲れていますね。当時は通常業務が 20-21 時頃終わり、その後 3-4 時間かけて Tissue microarray という免疫染色用の組織ブロックを多数作成し、週末に染色する、という作業を毎日毎日 2-3 ヶ月にわたって 1 日も欠かさず行っていました。幸いなことに、トップジャーナルに論文が通った(https://aacrjournals.org/clincancerres/article/15/4/1170/74467/Adult-Xp11-Translocation-Renal-Cell-Carcinoma)のですが、若さあってこそ乗り越えることができた日々でしたね。。。