尿酸はある程度必要ですが、多すぎると血管に悪さをします
健康診断で「尿酸が高いですよ!」と言われたことがある方は多いと思います。血糖値や血圧はなんとなくイメージがつくかもしれませんが、尿酸というのはなかなか通常の会話や生活で関わることが少ないため、「尿酸って一体何?」という疑問を抱くのは当然のことです。
まず、初めから少し驚かれるかもしれないようなことを言うと、「尿酸レベルが高い生物種ほど、寿命が長い」ということです。このことから尿酸は簡単に「悪玉」とは決めつけられない(Am J Clin Nutr, 1991)検査値であることがわかります。これは、同じヒトでも 1920 年代(3.4 mg/dL)、60 年代(5.0 mg/dL)、80 年代(6.25 mg/dL)、2020 年代と時間の経過とともに血清尿酸値レベルは上昇しており、その上昇傾向とともにヒトの寿命は延伸していることがその傍証といえるかもしれません。
では尿酸がヒトの体内で行っている(かもしれない)「善いこと」として予測されるのはどういった事象でしょうか。間違いなく「これ!」というメカニズムではないのですが、現在わかっていることとしては、「尿酸には抗酸化作用がある(抗酸化作用で有名なのはビタミン C ですが、ビタミン C はヒトの体内では作れないため、それを補っているのかもしれません)」ということです。抗酸化作用とはなにか、ということですが、活性酸素による酸化(これが起こると老化の促進・がんや生活習慣病の発症などにつながります)を予防することを "抗酸化"と言い、活性酸素から体を守ることを "抗酸化作用" と言い、からだに「良いこと」です。
しかしながら、尿酸は完全に「善玉」とはいえない点がいくつかあります。それは
- 尿酸値が低いときは尿酸は抗酸化作用を発揮しますが、尿酸値が高くなると血管を障害してしまう
- XO(キサンチンオキシダーゼ=これによりプリン体から尿酸への代謝が促進されます) により尿酸が産生されるときに発生する活性酸素が血管を障害する
- 尿酸塩結晶が自然免疫を介して血管を障害する
という点です。・・・難しいですね。細かい内容はともかく、尿酸は「低いレベルでは体内で必要、ただし過剰になると様々な機序で血管を傷つける」と覚えておくとよいと思います。
外来でよく「尿酸値を下げるにはどうすればよいでしょうか?」と聞かれますが、院長が毎日食べている「ある食品」の特定の "株" が尿酸値を下げるのに非常に有効であるとされています。それについてはまた明日。
下図は高尿酸血症が年々増加していることを示す論文(冨田眞佐子, 他 痛風と核酸代謝 2006)です。男性が圧倒的に多いことがわかりますね。