かつての休日夜間の救急外来診療について思い出してみた
院長が医師 2-4 年目くらいの頃まで、多くの病院で当直は「研修医または若手の医師がひとり病院にいてすべての患者をみる」のが常態化していました。泌尿器科医であった院長は腹部の症状を訴える方には比較的いろいろと対応できたのですが、眼科的な外傷や骨折しているかどうか悩むケースなどについては非常に悩むことがありました。
現在なら「オンコール」と呼ばれる当番医師が各診療科決まっていてそのひとに連絡すればよいのですが、当時はそういった体制が定まっておらず、たとえば眼科医が 4 名在籍している施設なら「若い先生から順にポケベル(! 当時はこれで医師に連絡してコールバックしてもらう、というシステムでした)」というスタイルで連絡を取っていました。
ときどき、運悪く若い先生方がそろって飲みに行っていたりして連絡が繋がらないと一番上の先生(科長とか部長)のベルを鳴らすことになり、「こんな遅い時間に俺様のポケベル鳴らしやがって」という雰囲気がありありと感じられるなか、「ふぅ(ため息のあと)・・・何?」という電話に「現在救急外来当直中、泌尿器科の駒井です。〇〇 歳男性、自宅兼鉄工所で作業中に金属片が眼の中に入り、開眼すると激しい疼痛と著明な眼球結膜の充血を認めておりますがどのように対応すればよいでしょうか・・・」みたいなやりとりをドキドキしながらする、ということがよくありました(当時の部長クラスは結構コワいひと、若手医師をイビるいひとが多かった気がします。今ならパワハラ認定だと思うのですが)。
このとき「・・・じゃあ今から行くよ(しょうがねぇなぁ)」といってくれる先生はよいのですが、ときに「今から言う処置をちゃんとやっておいて」といわれる場合がありました。こういったときは、その処置をこれまでに経験しているとよいのですが、初めての手技だとかなり難しいです。特に外傷や術後の患者さんですと自分の処置により患者さんに大きな迷惑をかけてしまう可能性があるので。
こういったことがあるので院長は極力自分が連絡を受けたときには、なるべく行くように心構えを持つようにしていました。このあらかじめ「心構えをもつ」というのが大事で、「重症度によって行きます」みたいな気持ちでいるとなるべく「このまま今晩は家でのんびりしようと思ってたんだからそっちでやっておいてよ」という心が勝ってしまう可能性が高くなり、結果として患者さんに害が及ぶことになります。もちろん「夜くらい寝かせてよ・・・」と思うのですが、医師という職業柄もう仕方がないなぁ、と思うしかありません。
ただしこれができるのはせいぜい 40 代前半、できれば 30 代まででしょう。それ以上年齢を重ねるとかなり体にこたえますし、しょっちゅう夜中に呼び出されていたら(翌日の業務が免除されるわけでは全くないので)「医者が患者さんよりも体調が悪そう」という笑えない状態になってしまいます。
現在、「医者の働き方改革」という金科玉条のもと、毎日多くの病院で救急患者さんへの対応がなされております。病院の Google レビューなどをみると「救急で対応された医師の態度が悪かった」「夜間だからといって処方が 1 日分しかもらえなかった」「夜間の加算で医療費が高かった」などのコメントが散見されます。気持ちはわかりますが、夜間や休日で対応する医師は多くの場合自分の専門以外を診る、というストレスの下で多くの患者さんを診察しています。どうかこういった事情も汲んでいただければありがたいです。
これからも 1-2 ヶ月に 1 回は秦野市休日夜間急患診療所で診察を行う予定になっている院長からのお願いでした。
イラストは Chat GPT に作ってもらった救急部の現場です。
明日は救急で出会っためずらしい症例について述べたいと思います。