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大地震発生!災害医療のハナシーその 2: 2 次トリアージの実際

[2024.02.09]

前回の 1 次トリアージを行い、傷病者を振り分けたあと、2 次トリアージとして行う方法としてよく用いられるのが PAT 法です。"PAT" とは Physiological and Anatomical Triage の略で、直訳すると「生理的および解剖学的トリアージ」となります。つまり、生理学的・解剖学的ポイントでさらなる評価を行うことになります。手順をごくごく簡単に示します。

  1. 生理学的評価
    • 意識・呼吸・循環・体温・著しい低血圧がないか確認し、ある一定の水準を超えればすべて「赤タグ(最優先治療群)」になります。
    • いわゆる「心肺停止」であれば「黒タグ(無呼吸群・死亡(の可能性が極めて高い)群)」になります。
  2. 解剖学的評価
    • 頭蓋骨などの重要部位の骨折・気胸や腹腔内出血など重篤な胸腹部外傷・脊髄損傷(しばらく放置されると手や足に永続的な麻痺が起こることがあります)・四肢切断などが診られればすべて「赤タグ」になります。
    • カラダの上から下まで評価していきますが、災害時にはなかなか背中を十分チェックするための人的資源がないことが多いので、多くは腹側のみの観察になることが多いです。
  3. 受傷機転の評価
    • どのように受傷したかということです。
    • 爆発・転落・火災に異常高温や冬季の津波等による異常低温環境・ガスなど有毒気体の吸引など、状況を評価します。ここで例に挙げた区分では、歩行できていても「黃タグ(非緊急治療群)」にすることがあります。
  4. 災害時要支援者
    • いわゆる災害弱者であるかどうかを確認します。
    • 簡単な覚え方として "WATCH PPP" という言葉があり、W= 女性(woman)、A= 高齢者(Aged)、T= 旅行者(Traveler)、C= 小児(Child)、H= 障害者(Handicapped)、P= 妊婦(Pregnant)、P= 病人(Patient)、P= 貧困者(Poor)は歩行できていても「黃タグ」にすることがあります。

われわれ秦野伊勢原医師会員が担当するのは 1 次トリアージになると思います(今回の PAT 法は救急医療専門医や外傷外科に精通した医師が行うことが望ましい)が、災害の状況によってはこういった評価ができるよう、院長も定期的にこのような知識の確認をしております。

それでも実際の現場で持っている知識を本当に 100% 活用できるかはわかりません。災害医療はわれわれ開業医が日々行っている診療とは全く異なりますので、とにかく大事なことは「地震などの災害が起こったら可能な限り自分の身は自分で守る」ことです。

明日は災害時の備え方、特に電気器具について近年の大震災から得られた教訓に基づいて述べてみたいと思います。

備えあれば憂いなし!

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