『陽だまりの樹』の漢方医には少し下駄を履かせてあげたい
昨日予告していたように、僭越ながら手塚治虫先生の名作『陽だまりの樹』のネガティブなところを紹介させていただきます。
端的に述べると、「あまりにも漢方医が無能に書かれすぎているところ」です。この傾向は みなもと太郎先生の『風雲児たち』でもみられます。すなわち、「これまで古い考えで日本の医学を牛耳ってきた漢方医よりもより科学的な西洋医学を勉強している蘭方医のほうが優れている」という描写です。これは手塚先生が現在の大阪大学医学部の前身・大阪帝国大学附属医学専門部入学時の前後の時代性(敗戦により日本的なものが否定され、西洋的なものが必要以上に優れてものとして医療に取り入れられた)もあるので仕方がないのですが、現在漢方診療を勉強しているわれわれからすると本当に残念です。
最近外来をやっていると「この患者さんのこの症状を西洋医学的なアプローチだけで治療しようとしても無理だろうな」と感じる場面が多数あります。西洋医学だけではベストの診療はできない、ということです。漢方をはじめとする東洋医学も必要ですし、その他にも代替医療と呼ばれる様々なアプローチ(アーユルヴェーダやアロマテラピー、ときにはヨガや瞑想など)がときに大きな力を発揮することがあります。
医療は宗教ではなく、医師の主義主張で診療するものではありません。新しい診療でもその効果などをいちはやく勉強し、取り入れられるものは積極的に活用し、患者さんファーストの診療を行ってまいりたいと思います。
・・・本当に僭越ながら名作『陽だまりの樹』についてネガティブなことを書き連ねてしまいました。ただ、上述したようなところは全体から考えれば本当に小さな範囲で、この名作の価値を下げるほどのようなものではありません。未読の皆様には是非この名作を読んでみてください。一気にのめり込んで最後まで読んでしまうほど面白いですよ!