一般会計の歳出のうち最大の割合が社会保障給付費(=年金 +医療費 +福祉ほか)であり、公的なおカネでまかなわれていますが医療費は決してここ数年で膨張しているわけではないことを知っておいてほしいです。
YouTube をネットサーフィンしていると、最近はずいぶん建設的な内容が取り上げられるようになってきた気がします。これは院長のアルゴリズム的なこともあるのでしょうが、それだけではありません。というのは、院長は検索ワードに適当な言葉(例えばすぐ目に入ったチラシなどに載っているもの)を入力してみることがあるのですが、そのときに最初に出てくる動画が結構マジメな話題(政治・経済・生活など)のことが多くなってきた印象があるからです。そんな風潮に乗っかって、今回は社会保障費などについての私見を述べてみます。お付き合いください。
令和 7 年度の国民負担率は 46.2% といわれます。「五公五民」など、かつての年貢的な言い方をすれば「4.62 公 5.38 民」ということになり、これは江戸初期の余裕がある幕政の時代が終わり、中期頃以降の厳しい税率に近づいていることになります。
国民負担率は「租税負担と社会保障負担を合わせたもの」とされます。前者についてはあまり詳しいことは知らないので黙殺してわれわれ医療者に直接関係がある後者について考えてみましょう。院長は 1995 年に大学入学しましたので、同期で四年制大学を卒業した友人は 1999 年に社会人一年目を迎えているわけです。当時、「官僚になる!」というと「それはスゴイねぇ」と言われることがアタリマエの時代であった気がします。院長の小学校時代から知っている同期も私立中・高から一橋大学に入り、その後大蔵省(現在の財務省)に就職しましたが、皆に祝福されていたのを覚えています(今はなにをやっているか残念ながら知りませんが)。東大・京大・一橋に早慶と、日本の有数な大学を卒業した俊英たちが官僚になっていきました。そもそも、彼らのアタマをもってすれば現在のような国家の厳しい財政状況を予測し、対応することはできなかったのでしょうか?
公表されている資料のなかで「2012 年の推計における社会保障給付費の予測」というものに直接あたることができます。当時の予測では「2022 年(10 年後)、年金負担は 60.4 兆円 + 医療費負担は 54 兆円になる」と予測されていました。しかしながら 2022 年の実際を見てみると、医療費は 42.8 兆円に抑えられています。一方、年金は 61.7 兆円となっており、抑えられていません。これまでニュースなどでよく「医療費の膨大によって国庫がもたなくなる」みたいなことを言うひとがいましたが、国民が見られるデータを確認する限り、医療費はしっかり減らされていることがわかります。社会保障費については福祉が占める割合もそれなりにあります(これについては 2012 年の予測では見つけられませんでした。予測されなかったのか、院長が見つけられていないのかわかりません。知っているひと是非教えて下さい)が、こちらについては 2020 ⇒ 2024 年で 33.9 兆円 ⇒ 33.4 兆円と、微減となっており、やはり医療費が国家の財政を悪化させるとする「医療費亡国論」は無理があるような気がします。
にも関わらず、財務省が公表している「"全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋" のなかの 2028 年度までに検討する取組」として挙げられているものを挙げてみると
・医療提供体制改革の推進(地域医療構想、かかりつけ医機能が発揮される制度整備)⇒ 受診抑制を狙った制度改革と考えられます
・薬剤保険給付の在り方の見直し ⇒ 一部の漢方薬・抗アレルギー薬を保険から外すなどがこれにあたると考えられます
・生活保護の医療扶助の適正化 ⇒ 生活保護受給者の "医療費無料" を終了すると考えられます
・経済情勢に対応した患者負担等の見直し(高額療養費自己負担限度額の見直し/入院時の食費の基準の見直し)⇒ 高額療養費についてはつい最近自民党・石破首相が引っ込めたアレです。要するに患者負担増です。
・サービス付き高齢者向け住宅等における介護サービス提供の適正化 などなど・・・。
もちろん、持続可能な国家運営に改革は不可欠ですが、なんとなく医療・介護の費用抑制ばかりと感じるのは院長だけではないはずです。
なんとなく政治家の考えていることを、ものすごーーーくキタナい言葉で勝手に想像してみます。ここからは院長の完全な妄想です。
「年金が社会保障費における最大の負担であることはもちろん知ってるよ。でも『年金下げます』なんて言えないよなぁ。そんなこと言ったらオレ次の選挙で落ちちゃうよ。それよりも儲かっている "イメージ" がある医者ども、特に開業医の奴らの負担をもっと上げるほうが受け入れられやすいだろう。あいつら医学部出て医療しか知らねぇからどうせもう 50 歳とか過ぎてもどうせ医者しか出来ねぇだろうしちょっと厳しくしたって結局医業やってくだろ。あいつら昔から『患者さんのため』とかやりがい用意してやれば長時間労働だって当直明け勤務だって平気でこなすような単細胞だからな」
・・・政治家皆が皆、こんなことを考えているわけではないことを心から祈るばかりです。マジメにやっている開業医はそんなに儲けていません。少なくとも当院は毎日 10 時間診療しても通帳の金額はほとんど増えていかないのが現実です。まあスポーツカーに乗りたいわけでもビンテージの腕時計が欲しいわけでもないので特別気にしてはいませんが、スタッフの給料やクリニックを前院長から買い取ったときにこしらえた借金を焦ったりすることなく返済できるくらいの気持ちの余裕は欲しいところです。いやこれホントマジで。