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恍惚の人』(有吉佐和子 先生)再読ーその 2 家族による介護について

[2024.01.28]

昨日に引き続き、有吉佐和子先生の『恍惚の人』について語ってみたいと思います。

この作品で出てくるリアルな描写として、認知能力の低下した高齢者が夜中に「暴漢が家にいる!」などと荒唐無稽なことを言って家人を起こす、というものがあります。認知症となった茂造さんが主に世話してくれる息子の妻である昭子さんを寝不足にしてしまうのがこの行動です。茂造さんはそれまで長く生活していた「はなれ」から、母屋に来て息子夫婦と一緒に暮らすようになりますが、毎晩このような騒ぎを起こしてしまい、昭子さんは閉口し、「このまま寝不足が続いたら早死してしまうわ」とこぼします。まさにそうです。

本作品の中で、若いひとの言葉として「お年寄りの身になって考えれば、家庭の中で若いひとと暮らす晩年が一番幸福ですからね。お仕事をお持ちだということは私も分かりますが、老人を抱えたら誰かが犠牲になることは、どうも仕方がないですね。私たちだって、やがては老人になるのですから」というセリフが出てきます。・・・気持ちはわかりますがこれは理想論でしょう。この考えですと「患者本人よりも介護者や付き添いが倒れてしまう」ことが頻繁に起こってしまう気がします。

医療や介護は提供する側に余裕がないとなかなか良いカタチではできません。例えば、患者さんも眠そうな医者や看護師に処置や採血、ましてや手術をしてもらいたくないでしょう。家族による介護をさせるならその家族の収入や休息を保障することが必要です。

超高齢社会で厳しいご時世ですが、なんとか介護や医療に充てる原資を国には工面してもらいたいですね。医療が人生における幸福度の少なくない部分を占めていると院長は考えておりますので。米国のような虫垂炎で 1 泊 2 日 150 万かかるような世の中にならないよう政治家には考えていただきたいと思います。

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