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漢方内服のタイミングと服薬アドヒアランス

[2024.06.01]

本日も昨日に引き続き第 40 回 日本東洋医学会学術総会の会期中ですので漢方についてのトピックを。

漢方はどの方剤についても、基本的に用法は「食間・食前」です。ちなみに厚生労働省・日本薬剤師会による『知っておきたい薬の知識』(平成 28 年版)によると、服用のタイミングは

となっておりますので、漢方については「胃の中に食べ物が入っていないとき」に内服するのがよい、ということになります。

それではなぜ、漢方は空腹時に飲むとよいのでしょうか。箇条書きでみてみましょう。

  1. 漢方は様々な生薬で構成されているため、さらに食物や他の内服薬と同時に飲むと相互作用のリスクが西洋薬よりも上がってしまう。空腹時内服でこれが避けられる
  2. 甘草・柴胡・人参(これはいわゆる普通のニンジンではなく朝鮮人参です)・芍薬などの生薬は「配糖体」と呼ばれる形態で薬中に存在⇒配糖体は腸管内で腸管細菌で代謝されることで吸収されるようになるため、食物に妨げられることのない空腹時のほうが速やかに腸管に到達できる
  3. 胃内の pH が上昇している食後に服用すると動悸や血圧上昇を起こす可能性のある生薬である麻黄・悪心嘔吐の原因になる附子の吸収を、空腹時(=胃内に胃酸が十分あるので pH が低い)服用により抑えることができる

などが考えられます。

ただし、胃が弱い場合や飲み忘れることが多い場合(特に食後に 3-4 種類以上の薬を内服している時では、食前に忘れてしまって飲まないよりは食後でも飲んだほうがマシ、という考え)ではあえて食後にしたり、院長も患者さんに「食前が原則ですが、まあ忘れてしまったら食後でもよいですよ」と言ってあります。

薬は医者が思っているより患者さんは飲んでいないものです。明日はこの問題、患者さんの「服薬アドヒアランス(患者さん自身医師の指示をしっかりと守って薬物治療を受けること、またはその受け入れ程度のこと)」について述べたいと思います。

院長もときどき患者さんの立場になるのでよくわかるので、本当に「薬は医者が思っているより患者さんは飲んでいないもの」です。いい薬を処方することも大事ですが、飲まなかったら元も子もありません。処方した薬はしっかり内服してもらえるよう、薬の必要性をしっかりと伝えて無理のない服用プランを考えるようにしていきたいと思っている院長でした。

写真は 2 年ほど前に口唇ヘルペスになったときに処方してもらった抗ウイルス薬です。飲んだほうが早く治るのですが、当時は手術手術の日でどうしても忘れてしまったり、錠形が結構大きかったのでおっくうになってしまい余らせてしまいました。薬の適正使用はもちろん、税金が投入されている医療費の観点からもよくないことをしてしまいました。現在は反省して、開業して以来処方される薬はかなりしっかり飲むようにしております。

 

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