サプリメント使用の指導は難しい
紅麹関連の問い合わせを日々頂いております。実際に心配になって来院され、血液と尿で腎機能をチェックされた患者さんも多数おられます。幸い当院で検査した患者さんで、大きな腎機能低下がみられた方は今のところ出ておりません。
臨床医として、安全第一で考えるなら「サプリメントは使用しないでください」と伝えるのが楽なのですが、そうも言えない事情があります。
というのも、日本人では院長が医学生時代からカルシウムなど特定のミネラルや栄養素が不足している、ということが言われているからです。最近では東京大学のグループが、「日本人 4,450 名という、大規模集団のデータを利用して習慣的な栄養素摂取量を算出し、適切であるかどうかを評価」した研究があります。結果については以下のような傾向が見られました。
・カルシウムの摂取量が推定平均必要量を下回っている人の割合は、すべての性・年齢層で高い
・鉄の摂取量は、12~64歳の女性で不足している人の割合が高い(79~95%)
・目標量については、タンパク質、食物繊維、カリウムで、習慣的摂取量が目標量の下限値を下回っている人が一定の割合でいる
・すべての性・年齢層の20%以上で、総脂肪と飽和脂肪酸の摂取量が目標量の上限値を超えている
・88%以上の人が、ナトリウム(食塩)の摂取量が目標量の上限値を超えている(https://www.mdpi.com/2072-6643/15/24/5113 で全文が読めます)
これらの結果以上から、カルシウム(およびその向上・維持につながるビタミン D )や女性における鉄分のサプリは使用することが望ましいケースが多そう、と予想できます。
サプリメントは医薬品と異なり、規制が強くなく、その効用や安全性についてかなり玉石混交という印象をうけます。
現在当院にはサプリメントは原則 1 種類しか置いていないのですが、上記のような状況を考えて、信頼できるメーカーのサプリメントはビタミン D、鉄分、カルシウムあたりのものを常備しておくことを検討しています。導入したらまた院内サイネージなどでお知らせさせていただきます。
最後に少し古い引用となりますが、厚生労働省が出している「健康 21」とよばれる健康増進運動における食生活の推奨について示しておきます。
これらをすべてクリアできる方はそれほど多くないと思うのですが、11 項目のうち、6〜8 項目くらいはクリアしたいところですね。
○適正体重を維持する。 注)適正体重:「[身長(m)]2×22」を標準 (BMI(Body Mass Index)は「体重(kg)/[身長(m)]2」で求められ、BMI=22を標準とする。) ○1日あたりの脂肪エネルギー比率を20~25%にする。 ○1日あたりの食塩摂取量を10g未満にする。 ○1日あたりの野菜摂取量を350g以上にする。 ○カルシウムに富む食品(牛乳・乳製品、豆類、緑黄色野菜)の摂取量を牛乳・乳製品130g、豆類100g、緑黄色野菜120g以上にする。 ○自分の適正体重を認識し、体重コントロールを実践する。 ○朝食を食べる。 ○1日最低1食は、きちんとした食事を、家族等2人以上で楽しく、30分以上かけてとる。 ○外食や食品を購入する時に栄養成分表示を参考にする。 ○自分の適正体重を維持することのできる食事量を理解する。 ○自分の食生活に問題があると思う場合は、改善に努める。 |
(厚生労働省のウェブサイト https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html より)