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データの宝庫は自分の足元にあり

[2024.05.01]

遠くにあるものは良く見えるものです。例えば海外のブランド品をことさらに上等に思ってしまったり、海外のスポーツ選手が強く見えてしまったり、NHK よりも CNN や BBC のほうがニュース内容が優れているように感じてしまったり。

逆に言えば自分の近くにあるものがダメに見えるということで、普段から当たり前のようにやっていることは退屈で珍しくないと決めつけてしまうことがあります。

研究内容を決めるときも上記のようなことはしばしばあり、自分も臨床研究のビギナーであった頃は「誰もこれまでに気づかなかった新しい研究テーマをなんの根拠もなく追い求めて何も生み出せない」、というループにハマりました(結局先輩の先生からテーマのヒントを与えられて最初の論文を書きましたが)。

そういう意味で「派手ではなく目立たないが、基礎的なことを突き詰める研究」は重要です。以前どこかの党の女性大臣がスーパーコンピューター競争において「2 位ではダメなんでしょうか?」と言いましたがこういった大臣は、この世の中には「人類で初めての知見」を得るために多くの研究者が寝食を忘れてリサーチを行っていることをまず知っておくべきと強く思います。

語気が強くなりましたが、今回紹介するのは、昨日のブログで話題に上げた「とぐろ」をはじめ、膀胱や尿道から排出される尿を対象として、エコーやハイスピードカメラでリアルタイムに評価している泌尿器科の先生です。信州大学泌尿器科の皆川 倫範 先生で、残念ながら直接ご挨拶したことはないのですが、ずいぶん前からいつも「シンプルながら面白い研究をされる先生だなぁ」と思っていました。

これは International Journal of Urology からの論文で、前立腺肥大症手術中に、核出された前立腺がもともとあったスペースを通過する生理食塩水がとぐろを発生していることを示しています。

 

これは Urology Today という商業誌(vol. 29 No.2, p54)からのもので、排尿時の一瞬をハイスピードカメラで捉え、われわれが平時「尿線」と呼んでいる尿流が実際にどのような流体力学的な運動を行っているかを示唆する内容となっています。

いずれも「地味に見えるがほとんど誰も知らない知見」といえるもので、こういった基礎的なデータは遠く米国に留学するより、自分が今いるまさに「そこ」で得られるものです。

当院には本日 114 名の患者さんが来院されました。GW の谷間でお休みの方も多くいらっしゃったので、初めて受診してくださった患者さんも 15 名を超えていました。診療内容としてはどのケースもそれだけで論文になるようなものではありませんが、ひとりひとりの患者さんの貴重なデータです。蓄積することで「新しい知見」に結び付けられるよう、しっかりとまとめておきたいと思います。まずは再来年の日本泌尿器科学会総会・日本プライマリ・ケア連合学会に演題を出し、発表までに論文化することを目標にしてがんばります。

とりあえず、明日は「自分がアイディアを出してある程度カタチにすることができた研究開発」について簡単に紹介したいと思います。

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