医療は性善説で成り立っています。こういった事例が出ると今後どこまで "善" を求めるべきか迷いますね。
最近世間を騒がせている大学病院勤務のスタッフと思われる人物による SNS 投稿についてです。大学(どうやら千葉大で間違いなさそう)病院の、病棟で入院患者さんを担当していた看護師が誰にでも読めるところに下記のようなポストを行っていました。
1 月 7 日の Yahoo ニュース(https://news.yahoo.co.jp/articles/e529cb58701e1d3c144de2ec6edebb9539a59653)によると
「やべ、ニカルジピン急速投与してしまった」(院長註:ニカルジピンは術中(ときに術後も)高血圧時に "点滴ラインから経静脈的に緩徐に投与"(血圧をモニターしながら)する降圧剤です。急速投与してしまうと狭心症や脳梗塞が誘発されることがあります) 、 「全介助、体無駄にでけー患者の体位交換とオムツ交換面倒だからずっと放置して夜勤を過ごしてたら見事にシーツまで尿便失禁して(中略)、褥瘡(じょくそう)も悪化してたらしい」「某大学病院、◯◯◯腸外科のあの医者、死ね」・・・。他にも「内服拒否する患者の薬をこっそり捨てた」、「痛み止め欲しいって言われたけど面倒だったから入れたフリしたら効いてみたい」、「忙しすぎてナースステーションに誰もいなくて、モニターずっと鳴ってたらしく、誰も気づかなくて見事に心停止になってた」など、誰が見ても「これが医療従事者のコメントか」とびっくりするような投稿が X に数多く見られたとのこと(すでにアカウントは削除済み)。
医師になって 24 年、医学部に入って 30 年になりますが、院長は「医療業界ほど性善説であふれたところはない」と信じております。もちろん、正社員としてどこかの企業で勤務したことがない「高校出てから医学部⇒医者 でほかの業界知らないくせに何言ってんの?」とツッコまれても何も返せない(来月で)48 歳ですが。少なくとも院長がこれまで勤務してきた病院や診療所は、院長が知る限り「医療者が患者さんの診療ファーストで医療行為を行う」ことを夜中だろうが明け方だろうが粛々とやってきた施設である、と胸を張って言えます。
しかしながら今回の "自爆テロ" (この看護師は、自分のキャリアに傷がつくようなことになっても勤務している病棟、いや医療における看護師業務が「こんなに最悪なのー!」って世間に知らせて病棟や病院を困らせたかったようにみえるのでこう呼びます)的な行動は、特に専門病院や大学病院ではほとんどの事象が性善説で成り立っている現代の医療制度というか勤務環境を抜本的に見直す必要性をわれわれ経営者・管理者に突きつけているように思えます。
ただそうなると結構なコストと意味不明な手間がかかります。「院内の備品をスタッフが持ち帰らないようにペーパータオルひとつからバーコードつける」「スタッフの休憩室に監視カメラ」「スタッフの SNS 使用禁止」「写真撮影や動画記録防止のため勤務中スマホ持ち込み禁止」「スタッフ私用禁止目的で電話を録音」など。・・・やりたくないですね。正直言って。記録したところでそれをチェックするのも不毛ですし。
とりあえず現在、当院のスタッフはともに働いていて十二分に信頼できると自信を持っていますのですぐに皆々の行動を監視するようなことをする予定はありませんが、こういったことが(ニュースとして)あったということはクリニックの管理上アタマの片隅においておこうかと思います。
学校や役所なども同じでしょうが、ほとんどのひとは「一生懸命」働いております。しかしながら一部正規分布から外れている方というか、業界に向いていない方というか、そういったひとが入ってくるのは世の常でしょう。まだスタッフが 10 名以下の当院ですが、今後クリニックが運良く成長して構えが大きくなって 20 名以上くらいになったらまたいろいろと考えないといけないのでしょうね。そのあたりは分院展開していたり数多くのスタッフを抱えている院長先生にあったときに聞いてみたいと思います。
とりあえず当院に来てくださる患者さんには「安心して診療を受けてくださいね」とお伝えしておきますね\(^o^)/