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紅麹(べにこうじ)による腎機能低下の病態がわかってきたようです

[2024.04.16]

突然ですが、第 84 回医師国家試験で次のような問題が出題されました。1990 年 3 月です。

● Fanconi (ファンコニー)症候群の検査所見として,正しい組み合わせはどれか。

a. 骨軟化症 

b. アミノ酸尿 

c. 高カリウム血症 

d. リン(P)クリアランス上昇 

e. アニオンギャップ高値の代謝性アシドーシス

・・・医師や腎臓内科関連の医療スタッフでないと、なんだかさっぱりわからないと思います。

ごくごく簡単に解説するとファンコニー症候群とは腎内で血液から濾過(ろか)された原尿から、いろいろな物質を体内で利用するために再吸収するためにある「尿細管」と呼ばれる部位での再吸収が低下してしまう病気です。リンが再吸収されなくなる→リンがたくさん尿に出ていってしまう(このことを「クリアランスが上昇する」といいますので d. は正解、さらにリンが不足するとしっかりとした硬度をもつ骨の形成が妨げられるので a. も正解)、またアミノ酸の再吸収も障害されるので正解は a, b, d となります。

こんなことを長々となぜ述べたかと言うと、紅麹による健康被害を受けた患者さんの病態がこの症候群である可能性が高い、と報道されていたからです。

この症候群の患者さんをたまたま以前勤務していた病院で 2 例診ていたのですが、ひとりはシスチン尿症という遺伝性疾患を、もうひとりは多発性骨髄腫という血液疾患を有しており、合併症としてこのファンコニー症候群を呈していました。

紅麹製品がすべてこの症候群を引き起こしていた、と断定することは現時点ではもちろん言えませんが、摂取していた方は是非一度医療機関を受診し、採血・尿検査を行って頂ければと思います。現在この検査は保険診療で行うことができますので。

当院でも今のところ 1 つだけですがサプリメントを扱っております。このサプリについては効果や安全性に自信を持っておりますが、医薬品と異なり厳密な臨床試験を経て承認されたものではないので、その点注意して患者さんに提供したいと思っております。

小林製薬さんのホームページより。ヘルスケア事業においても、他の事業と同様「スピード開発」「わかりやすさのマーケティング」は確かに必要です。

しかしながらコレステロール低下・排尿障害改善・内臓脂肪減量など、やや誇大広告と思えるような内容の CM でひとを引き付けて売上を伸ばすというのはやり過ぎだったのかもしれません。

明日も OTC(over the counter の略で、「薬局など市販で購入可能なお薬」のこと)について私見を述べてみたいと思います。

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