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どのように手術を学んだかーその 3(記録を文字ではなく絵で残す)

[2024.04.15]

もともと文系だった院長は数学が苦手でした。特に空間図形。三角柱を斜めに切った切り口の面積とか、「そんなもの求めて何になるの?」とか思いながら大学受験を乗り切った記憶があります。

大学を卒業して外科系(診療内容のなかに手術がある診療科がこう呼ばれます:外科・整形外科・脳神経外科・心臓血管外科が代表的で、あとは泌尿器科・耳鼻咽喉科・皮膚科などがそれらに次ぐ感じです)に進むことにして 4 ヶ月後、はじめて手術で執刀しました。高位精巣摘除術という、40 分くらいの手術でした。

紙カルテだった当時、術後に手術記録を記載するのですが、先輩方の記録をみると文章に加えて必ずシェーマ(絵)がついています。そこで自分が行った術野を思い返しながら一生懸命シェーマを描こうと思ったのですが・・・これがなかなか描けません。シェーマにする、というのは手術のことを 100%(いや、当日行わなかったが、ときにはこういうふうにすることもある、という術式バリエーションを含めて 120%) わかっていないと難しいのです。

それ以来、手術を行ったらすべて、カルテ記載とは別に自分のノートにシェーマで記録するようにしました。

そうすると自分専用、世界で唯一の手術ノート(教科書よりずっと貴重)が出来上がります。これをどんなに定型的な手術でも毎回見返すようにします。すると 15 年目くらいでしょうか、突然術野をみたときに切開ライン、剥離時における力の入れ具合や方向、さらに助手に把持させておく部位や牽引の向きなどが一気にわかるようになったのです。

これは数学で図形問題を解いているときに「補助線を 1 本引いたらわかりやすくなる類の問題」で「効果的な補助線がアタマのなかでひらめく」瞬間にすごく似ていました。「数学は突然わかるときがくるのでそれまで必死にやりなさい」と高校の先生に言われたことがあるのですが、自分にとっては手術も同じような感じで「上達した瞬間」がいくつかありました。

今後若手の先生といっしょに手術を行うときは是非とも「その瞬間」が味わえるようにサポートしていきたいと思っています。

写真はある日の手術記録です。自分にさえわかればよいのであまり文法を気にせず思いのままに英語で補足の文をつけています。

 

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