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古典を読んで医学教育に思いを馳せてみる

[2024.01.04]

院長はもともと文学部志望でした。

高校 2 年の冬まで文系で、手塚治虫先生の『ブラックジャック』を読んで理転して医者を目指したクチです。

元々文系人間なので歴史が好きです。また、わかりやすい注釈が必須ですが、古典を読むのも好きです。

今回は中世古典の名文集、『徒然草』より医師が出てくる話を紹介します。

第五十三段「ふざけて鼎(かなえ)に頭を突っ込み抜けなくなった法師のはなし」より。

稚児が出家して法師になる別れの宴の場でのことです。ひとりの法師が酔って浮かれてしまい、鼎(かなえ。3 本の足がついた金属製の容器。湯を沸かしたり食べ物を煮たりするためのもの)を坊主頭に無理やり押し込んで(顔面の部分が完全に鼎に覆われた状態で)舞い始めました。座中のひとびとは大いに笑い転げて盛り上がりました。その法師がひとしきり舞った後、その鼎を抜こうとすると引っかかって首まわりの皮がむけて出血するわ顔全体が腫れてくるわで抜けなくなってしまいました。

呼吸まで苦しくなってきたため、医者の家に向かいました。するとその医者は「このような症状は医学書にも見当たらず、口伝の教えにもございません」というばかりで全く役に立ちません。。。

医者にはこういうことがよくあります。医学部では最新医療の知見等については教わるものの、「本当に困ったときの対応」についてはあまり教わりません。虫刺症でも蜂刺されくらいは習いますが、ムカデやカミキリモドキ、ヒロヘリアオイラガ(イモムシの一種)への対応などは一切教わったことはなく、救急外来などで出会ったときに自学自習して技術や知識を習得していきます。

当院にも様々な外来患者さんがいらっしゃいますので日々勉強の気持ちを忘れずに毎日の診療を行ってまいりたいと思います。

ところで、この徒然草第五十三段ですが、力ずくで引っ張ってなんとか抜けたものの、その法師は耳鼻に怪我を負って後々随分患ったというオチで終わっています。皆様も宴席でのおふざけには注意しましょう。

(鼎が取れなくなっているだけなのに医者が脈診をとっているのが笑いを誘います(←脈が診断の助けにはならないだろうに・・・)。英一蝶による『徒然草・御室法師図』より。画質を落として掲載)

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