理解を深めるには視点をかえることがよいと実感した経験を紹介します
院長は循環器専門ではありませんが、ときどき POCUS(的を絞って特定の臓器を "ぱっと見" する短時間のエコー検査のこと)として心エコーをみることがあります。もちろん、循環器科の先生よりは心臓のエコー描出に慣れていないので、お腹の心窩部(みぞおちのあたり)から頭側にエコーを見上げてみる(心窩部矢状断長軸像とか言います) 視点でまずチェックするようにしています。
このときよくみえるのが下大静脈といって、心臓の右心房という 4 つの部屋のうちもっとも最初に血液が通る場所とつながっている血管です。このとき必ず目印として下大静脈から分岐する肝静脈という、肝臓から心臓に還ってくる血管を確認するのですが、勤務医時代はよくこの下大静脈・肝静脈を右腎がんの手術で操作することがありました。
腹部からみる下大静脈と心臓が描出されているところでみる下大静脈は、一見すると異なったもののようにみえますが、アタマの中でそのふたつが解剖としてつながると非常に "腑に落ち" ます。これは外科系の医師でないとちょっと難しい感覚かもしれません。例えるなら「いつも授業を聞く立場である学生に、先生役をさせて他の学生に教えさせると、授業を組み立てていくのがいかに難しいことかわかる」ことに似ているでしょうか。ひとつの解剖をオモテとウラの両面から確認することで、より解剖が明快になりました。月を裏から見たような感じ。
どんな分野の仕事・学習・修行にも通じることと思いますが、ひとつのことを多面的・多角的にみるというのは学びのために非常に有効です。医療、すなわち人体の世界というのは学びに終わりがなく、われわれ医療者は常に勉強し続けることが必要です。今回の経験を踏まえ、今後はひとつのことを勉強するときになるべくたくさんの視点でアプローチするのが理解の早道になるといえそうです。
・・・少しむずかしいハナシになってしまいました。とりあえず明日からも楽しんで勉強を続けたいと思った院長でした。
腹部と胸部の境界領域にあたる部分のエコー所見。CT や MRI のようにわかりやすい画像ではありませんが、エコーはとにかく患者さんの負担が少なく、よい情報を得るには検者のウデが必要な検査なので、向上心旺盛な院長としては大好きな検査です(他の患者さんを待たせてしまうのですべてのエコーをじっくりできないのがツライところです^^;)。