帯状疱疹ワクチンがもうすぐ定期接種化します。ご検討中の方は 4 月以降に。
成人の帯状疱疹が増えています。2014 年に水痘ワクチンが子どもに定期接種されるようになったことが一因とされています。水痘とは「水ぼうそう」のことで、"水痘帯状疱疹ウイルス" により発症します。すなわち「水ぼうそう」と「帯状疱疹」の原因ウイルスが同一であるということになります。
水痘ワクチン普及 ⇒ 子どもの水ぼうそう流行が激減 ⇒ 成人が水痘帯状疱疹ウイルスに暴露される機会が減少、同ウイルスに対する免疫低下 ⇒ 帯状疱疹増加
という流れのようです。
この「帯状疱疹増加」については宮崎県皮膚科医会が中心となってまとめられた "宮崎スタディ"(たくさん論文ありますが、たとえば https://www.jdsjournal.com/article/S0923-1811(21)00255-3/fulltext など) が有名で、年齢別の帯状疱疹発症数及び発症率をみると、50 歳以上から増加し、発症数は 60 代、発症率は 70 代がピークでした(図:株式会社マルホのウェブサイトより)。現在当院でも 60-70 代で帯状疱疹に罹患後後遺症として長引く神経痛に悩まされている患者さんが少なからずいらっしゃいます。漢方薬をいろいろと試したり、鍼灸をやってみたりペインクリニックの先生にお願いしたりと、考えつく手を打っているのですがなかなかすっきり治る患者さんは少ないです。
そんな帯状疱疹、ワクチンでその発症をかなり抑えられることがわかっているのですが、このワクチンに 2 種類あることで一般の方が少し分かりづらい感じになっています。その 2 種類を簡単に説明すると
- 乾燥弱毒生ワクチン「ビケン」・・・水痘の生ワクチン(生ワクチンとは「病原性をなくしたウィルスなどを使用したもの」。BCG、麻しん、風しんワクチンなど)で、子どもの定期接種に使用されているものと同じ。30 年以上前から使用されており、副反応は局所のものくらいで安全性高だが効果は 50-60% 程度。
- シングリックス・・・サブユニットワクチン(サブユニットワクチンとは「病原体の成分・部品である "タンパク質" を投与するもの」。百日咳など)で、ウイルス表面抗原の一部にアジュバント(免疫賦活効果を高めるために含まれている成分のこと)が加えられているので 90% 程度の発症を予防できる一方、発熱や頭痛などの全身症状を含めた副反応が多い
当院ではこれら 2 種類のワクチンについて提示しますが、2. が現時点ではとても多いです。これまでは自費接種だったので、おそらくより強く「予防効果」を期待される方が多かったためと考えております。
2025 年 4 月、すなわちあと 1 ヶ月ほどで帯状疱疹の定期接種化が始まります。シングリックスは 1 本 2 万〜3 万円で 2 回打つ必要があるのでとても高価なのですが、1 回の自己負担が 7,000 円となる予定だそうです(まだ秦野市のウェブサイトに記載されていませんでしたがおそらくこの値段)。ただ、これら 2 種類のワクチンは 50 歳以上で接種可能なのですが、定期接種化の対象は 65 歳以上とのことです。帯状疱疹は高齢者に多い疾患ですが、先程の宮崎スタディをみると子ども世代と接する 20〜40 代のいわゆる子育て世代における帯状疱疹も増えているので今後はもう少し若い世代にもこの定期接種化が可能になればと思っています。現在の医療を取り巻く経済状況を考えると難しい気もしますが・・・。
とりあえず「体の左右どちらかに生じる痛みやかゆみを伴う発疹」があったらすぐに医療機関に受診を!