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今年の医師国家試験問題をチラ見していたら常識で解ける問題がたくさん。

[2025.03.01]

院長はミステリが好きです。以前もブログで書きましたが島田荘司先生の『占星術殺人事件』や綾辻行人先生の『十角館の殺人』など、何回読んでもジワる作品がたくさんあり、ミステリ作家の先生方のプロット構成力にはただただ脱帽します。すごい。いつか 1 作品だけでもよいからすごいトリックを備えたミステリ作品を書いてみたいと思っています。

さて、ふとした機会に先月行われた第 119 回 医師国家試験の問題をみる機会がありました。そのなかで "問題番号 119C47" がミステリみたいで面白かったです。

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[119C47]

58歳の女性。既往歴に特記すべきことはない。昨日、交通事故で死亡した息子の通夜があった。息子の傍にいたいと言って棺が安置されている部屋に行ったまま、朝になっても帰ってこないのを不審に思った夫が部屋に行ったところ、棺内に上半身を入れた状態で死亡しているのを発見した。
死因で考えられるのはどれか。

a トルエン中毒
b 硫化水素中毒
c 一酸化炭素中毒
d 二酸化炭素中毒
e ホルマリン中毒

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・・・え?密室殺人の完全犯罪?と思ってしまいました。これ、医学部で勉強しなくてもご家族での不幸を経験してお通夜の準備などから関わった方なら回答可能です。

答えは c。お通夜の場で、大切なご遺体を腐敗を防ぎ生前の姿に近い形で保つために用いられているのがドライアイスですね。ドライアイスは二酸化炭素の固体で空気より比重が重いので下にたまります。問題文から「息子の傍にいたい」と言ったこの 58 歳女性はおそらく悲しみのあまり息子さんのご遺体に顔をつけるようにして泣いてしまったのかもしれません。あまりに高濃度の二酸化炭素を吸ってしまうと中毒を起こし、ときに死亡事故となります。

実際に棺に入れられる保冷用のドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込み中毒を起こしたとみられる死亡事故が 2020, 2021 年の 2 年間で全国で 3 件起きている、というデータがあるそうです。

この問題は正答できる方も多いと思います。最近の医師国家試験はこういった「医学の知識というよりも一般常識に近いものについて問う」問題が増えている気がします。明日はそんな問題を何問か紹介してみたいと思います。

(写真は NHK のウェブサイト https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230922a.html より)

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