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グーグルレビューに思う

[2024.06.28]

昨日のブログでプリンシパルーエージェント理論について、またその文脈でエージェンシースラックについて簡単に説明しました。

おさらいですが、エージェンシースラックとは「エージェントが自分の利益を優先するためにプリンシパルの利益 に反する行動をとってしまうこと」を指すのでした。詳しくは昨日のブログを確認してみてください。

医療でもこの現象はみられます。特に最近気になるのはクリニックなどの医療機関に対するグーグルレビューです。最近グーグルレビューでいわれのない誹謗中傷をされた医療機関が訴訟を起こしたということがニュースになりました(https://news.yahoo.co.jp/articles/f9ffbf81d86e2d0e2a23ab64dcc21140a9b3cccb)。

たとえばあるクリニックがお金を払っていわゆる「やらせ業者」みたいなところに自院に好意的な口コミを多数掲載させ、さらに自院ウェブサイトのアクセス数が増加させたとします。するとそのクリニックはグーグルレビューの「見かけ上」ではありますが評判が向上し、来院患者数は増えるかもしれません。

しかしこういった「やらせ」はグーグル社が本来想定するレビューシステムに則っていないという点でグーグルやプリンシパル、やらせ口コミ投稿者がエージェントという関係におけるエージェンシースラックです。一部の投稿者が「真面目に投稿するのではなくてクリニック側に都合がよいことを書いてお金をもらった方が良い」と考えて自分の利益を優先させた結果、ということです。

そもそもこういったレビューシステムは国民皆保険制度が浸透している日本の保険医療機関にあまりそぐわないような気もします。保険診療は医師が値段を決められず、公定価格によって行われます。となると、なるべくコストをかけずに行うほうが病院にとっては利益が出ることになりますのであまり患者さんへのサービスにお金を割けないことになります。これが医療費が自由化され、どのクリニックや病院でも採血から何から何まですべて価格が異なる、みたいな世の中でしたらグーグルレビューで「あの病院はこんなにお金をとるのにこれくらいしかサービスがない」というのも真っ当な意見だと思います。ただし、これまで国民皆保険制度が始まって 63 年、もう還暦を迎えたこの制度をいきなり解体するのはとてもではないですがちょっと無理でしょう。

われわれ医療機関も生き残りのために努力することはもちろん必要ですが、患者さん(ならまだいいのですが、やらせ業者も含まれる不特定多数)によるレビューだけで施設の評価を行うのは少し早計な気がします。自分が行こうかと思っている医療機関のレビューが低めの点でもそれだけでネガティブな評価をくださないでいただけるとありがたいです。院長が知る限り、医療従事者は皆基本的にはお金もうけよりも患者さんの健康増進を第一に考えているひとばかりですので。

明日は当院のグーグルレビューについて述べてみたいと思います。かなりデリケートな話題ですが思い切って!

写真はウチの柴犬、マルです。遊びたそうなのを無視していたらなんだかこんな感じで睨まれました。また日曜日に遊ぼうね、と言ったらため息つきながらふて寝。その姿がまた可愛いかったです。

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