やめよう。GLP-1 受容体作動薬による "安易な" ダイエット
GLP-1(ジーエルピーワン)という言葉をググってみて下さい。
そのあとにおそらく「ダイエット」という言葉が続いて予測検索が出てくると思います。
GLP-1 に関わるこのおくすり、正式名称は GLP-1 受容体作動薬というのですが、現在おそらく自費診療クリニックで「やせ薬」として最も頻繁に処方されているものと思われます(実態調査がないのでわかりませんが)。
GLP-1は、食後の血糖値上昇にともない、小腸にある L 細胞から分泌されます。その後膵臓 β 細胞と呼ばれる細胞の表面にある GLP-1 受容体(GLP-1 が鍵なら GLP-1 受容体が鍵穴です) にくっつき、β 細胞内からインスリン分泌を促進させます。この GLP-1 の優れているのが血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる、という特徴があります。また、GLP-1 は中枢神経(脳)に作用して食欲を落とす、という効果もあります。
GLP-1 受容体作動薬はこの GLP-1 を外部から補うことで血糖値を下げます。発売当初は注射薬のみでしたが、現在は内服用の剤型もあります。糖尿病患者さんにまず使う、というくすりではありませんが、特に肥満型の糖尿病患者さんにその有効性が示されています。
この「肥満型の糖尿病に有効」という点ですが、これは GLP-1 受容体作動薬によって
・すぐにお腹がいっぱいになるように感じ、普段のように食べられなくなる
・前日夜間に食べたものが翌朝になってもまだ残っているような感じがして食べられない
となるためで、食欲減退から血糖値の低下が得られます。期待できる体重減少効果としては「もともとの体重の 10-15% 程度」くらいと思って下さい。
GLP-1 受容体作動薬を "やせ薬" として使う場合、大きな問題が 2 つあります。
- このくすりが持つ副作用を処方している医師や実際の使用者が十分理解しているか。
- 本来糖尿病治療薬として必要な患者さんがいるのに、ダイエット目的に使ってよいのか。
明日はこのことについて私見を述べたいと思います。