半日くらいずっと行っていると耳が相当痛くなるのですが省かないで行っている昔ながらの診察行為
ようやくインフルエンザが収束してきました。12 月末から 1 月中旬くらいまでは日々本当にたくさんの発熱患者さんが来院され、二桁/日 を超えるインフルエンザ(コロナも一部)陽性結果が出ていましたので少しホッとしています。当院で把握している限りですが、肺炎などの重症化に至ったケースは全体でみるとちょうど 1% ほどで、おそらくこの数字は呼吸器科専門のクリニックではないため比較的軽症の方が来院している影響でしょう。今後インフルエンザ B 型など、これまでと異なる原因による感染症が流行する可能性があります。今週の秦野は明日・明後日の最低気温予測が氷点下、でも天気は快晴という、ウイルスにとっては伝播しやすい乾燥状態が続きますので皆様是非マスク・手洗い・水分摂取・充分な休養を励行するようにしてください。
ところで、先程の「重症化」について、一次医療期間の医師として欠かさず行っているのが「聴診」です。これは胸部聴診によって得られる呼吸音、肺野の雑音などの聴覚情報により、「肺炎!」と一発診断できる患者さんが、少ないですがいらっしゃるためです。発熱されている患者さんを多く診ていると、数十名に 1 名程度ですが、聴診器を当てただけで「これは肺炎でよいでしょう」という音が聴かれ、一応胸部 Xp で確認するとやっぱり・・・というケースがあります。そうなると年齢や合併症、さらには家族のサポートや曜日(週末か週始めか、翌日当院が休診日ではないか)などを考慮しながら、「いつもありがとうございます」と感謝しながら近隣の病院に治療をお願いする電話連絡を入れるか検討することになります。
というわけで聴診というのは昔からある診察手技ですが、一定程度のメリットがあるわけです。
この聴診、院長は市内のある小学校で校医をしているのですが、最近は児童を裸にせず、服の上から行うようにしています。もちろん、こうすると「呼吸音や心音が弱くなる」「服の生地によっては擦れる音がして聴取しづらい」などのデメリットがあるので正確を期すなら直接聴診器を皮膚にあてたくなります。しかし異常音が聴取される頻度(どの学校からの報告も 1 % 以下)やプライバシーに関する最近の考え方、ワンピースなどの服装によっては脱衣させる手間などを考慮するとあえて全員に直接聴診をする必要がないだろうと思うのでそうしています。ただしギャロップ音や全収縮期雑音など、上述の肺炎診断のような「一発診断」が可能な特徴的な心音をキャッチし損なう可能性が出てきます。先日 ABEMA プライムで「倒れていた女性に下着を外して AED を行い一命をとりとめたものの、のちにその母親から確か "わいせつ行為" かなにかで訴えられた事例」(https://www.youtube.com/watch?v=VY1-2DsErxA)について議論になっていました。いろいろなことを考えなければならない世の中ですが、それぞれの現場で考え、議論をしてひとつひとつ決めていくしかないのが現状ですが、できれば文科省や厚労省で一定のガイドライン(現在学校健康診断の脱衣については特に規定が出ていないはずです。環境整備についての通知は 2024 年 1 月 22 日に出ていますが)を作成してほしいところです。
救命処置ですが、われわれ医療従事者は医療機関内にいる間はもちろん、それ以外の場所でも基本的に「当然助けることが求められる立場」ですので自分としては積極的に救助するように常に心の準備をしています。ただ、「ひとが倒れているから AED」ではあまりに短絡的というか危険で、AED というのは基本的に「呼びかけ反応がない」「正常な呼吸がない」「脈拍がない」「処置をするときの(物理的・心理的など様々な)安全が処置を受ける者、処置をする者双方に確保されている」という条件が揃っていないと行ってはいけないとされるものです。もちろん非医療従事者が慌てて行ってしまう AED を簡単に批判はできず、結果として助かったなら良し、とする考え方もありますが、まずは「AED を考えるべき条件」というのは AED の手技そのものと同じくらい一般の方に知っておいていただけるよう、われわれがもっと伝えなければいけないでしょう。一生に何度もあることではないのでなかなか難しいのですが。
そんなことを考えながら明日もまた発熱患者さんが来院されましたらしっかりと聴診をして重症を示唆するような所見があったらただちに高次医療機関との連携を行ってまいります。近隣の先生方、今後とも宜しくお願いいたします。