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八潮の道路陥没事故、泌尿器科医が感じたこと

[2025.02.07]

ひとと出会ったら別れがあり。入学したら卒業があり。この世に生まれたらいつかこの世とお別れするときがきます。どんなものでもはじまりがあれば終わりがある。アタリマエのことです。

ヒトのカラダも同じ。空気を吸ったら吐く。心臓から組織に血液を送り出したら組織から血液を返ってくる。口から飲食したら尿と便で出す。泌尿器科医となった 24 年前に当時の上司から「泌尿器科は体内の配管工。人体の下水道とも言うべき尿路をしっかりメンテナンスして患者さんの排尿を助けることにプライドを持って仕事しなさい」と言われました。

院長は医学部 5 年生のとき、どの診療科に進もうかと思案していました。当時は「手術をして全身管理ができる診療科に行こう」と考えていたので泌尿器科と第一外科(当時の東京医科歯科大学にあり、主に血管・食道・胃・肝胆膵などを専門にしていた外科)の 2 つが選択肢でした。最終的には上記の「配管工」「下水」というコトバが妙にしっくりきて泌尿器科に進みました。学生時代は剣道部という、運動部のなかではどう考えても地味なポジションにいて、カオもドラマの主人公より「村人 B」とかのほうが向いているルックスでしたのである意味「地味さ」が自分の性に合っているように感じたのでしょう。新宿より秦野って落ち着くねぇ、みたいな感じで。まあ実際泌尿器科医になったらそんなに地味一辺倒ではなく結構いろいろ目立つ仕事(テレビや雑誌の取材など)もさせていただいたので別に泌尿器科界隈が陰キャの集まりって訳でもないのですが。

さて、タイトルにある八潮の道路陥没、まだまだ復旧の目処が立っていません。運転手の安否が本当に心配です。また、日々危険と隣合わせで寒空の下作業をしている方々、どうか気を付けてください。

そんな陥没事故に対して富山県の株式会社松下工業の方がポストした X の投稿:「維持に対してのコストを払ってない、見て見ぬふりをしてきたツケ、と言えるでしょうね、そしてそれらを行う技術者・業者をないがしろにしてきた日本・日本人全体の責任でもあると思います」というコトバ、非常に重く感じました。この会社の方が ABEMA プライムの番組で「下水整備を含めた配管の仕事はの極めて重要なインフラなのに普段の生活ではその恩恵というかインフラの姿が見えない」とおっしゃっていました。・・・これに院長は深く頷いてしまいました。

泌尿器科医は「ヒトのカラダにおける "陰のインフラ整備工"」です。腎が尿を生成し、それを尿管に流して膀胱に送り込み、排出させる。排尿という多くの方がが日々 "アタリマエ" に行っている生理現象を問題なく行えるようなサポートをすること。それが院長の仕事であり、患者さんに「気持ちよくおしっこできたよ!」と言われたらこれ以上の喜びはありません。そのためには腎機能を保つための食事・運動・睡眠についてうるさく指導しなければならないときもありますし、長時間座位で仕事をして慢性前立腺炎(デスクワークでずっと座ってコーヒーなどのカフェイン飲料を飲んで眠気を我慢しながらひたすらデジタル作業を汗もかかずに行っている方に比較的多くみられる疾患で、排尿時違和感や会陰部痛などで来院されます)となって来られた方には「なるべく途中でやすんで軽い運動をしましょう」と仕事に水を差すようなことをあえて伝えるときもあります。

「アタリマエのことをアタリマエにするために頑張っているひと」はたくさんいます。今回のような配管工の方々や自治体のゴミ事業に関わる方々や電気・ガス・水道・インターネット・電話・電車などすべてのインフラに関わる方々、あとは日本で快適に暮らすためのすべての業種に関わる方々がこのベン図に含まれることでしょう。「地味だけど大事」。今回の陥没事故を見て改めてその価値を再確認した院長でした。きっと人体におけるもうひとつの排泄路、消化管で特に大腸肛門を専門とする消化器科の先生もこのことはわかってくれる・・・ハズ。

イラストは AI に描かせた「赤い帽子と青いオーバーオールを着た元気な配管工」です。・・・どこかで見たキャラとか言わないで。

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