最近本を、特に読んでいるとカタカナが多いですね。
近、本を読んでいると、やたらとカタカナ英語に出会います。
「バリューを提供する」「コンセプトを明確にする」「アフォーダブルなサービスを実現する」「ステークホルダーとエンゲージメントを高める」
なるほど。なんとなく格好いいですね。ややビジネス書らしい響きが強いですが。しかし立ち止まって考えてみると、「価値を提供する」「考え方を明確にする」「手頃な価格にする」「関係者とのつながりを深める」と言えば、それで済むとも言えます。
もちろん、日本語に適切な訳語がなかったり、英語のまま使ったほうが正確だったりする言葉もあります。「インターネット」や「コンピューター」まで無理に日本語に直す必要はありません。専門家同士で、共通の意味を持つ用語として使う場面もあるでしょう。問題はカタカナ英語が理解を助けるためではなく、文章をそれらしく見せるために使われている場合です。簡単なことを、あえて難しく言う。日本語で十分に伝えられる内容を、英語に置き換えることで少し高度な話に見せる。そんな「言葉のお化粧」が、出版物だけでなく、ビジネス、行政、教育、そして医療の世界にも広がっているように思います。
そもそも言葉の役割は、話し手の知識を披露することではありません。相手に意味を届けることでしょう。「バリュー」という言葉を使った瞬間に、その文章の価値が高まるわけではありません。「コンセプト」と書けば、考えが明確になるわけでもありません。むしろ、言葉が新しくなるほど、私たちは「なんとなく分かった気分」になり、その中身を深く考えなくなることがあります。もしかすると、そこには単なる言葉の流行を超えた、「現代社会で分かりやすく言うことを、どこか格好悪いと思ってしまう風潮」が隠れているのかもしれません。
この流れで「カタカナ英語」を出すのはちょっとやりづらいところがあるのですが、カタカナを使ったほうがよい・または使わないと伝えづらい、という状況もあります。特に女性の妊娠や出産に関する用語についてはストレートな言葉でないほうがよいので前者にあたるのですが、今回はそういった用語で「プレコンセプションケア」という言葉について説明してみます。「コンセプト」は "concept"、"con" は「共に」という意味のラテン語、"cept" は "capere" というラテン語で、「つかまえる」という意味です。ここから concept は「バラバラの物事をひとつにまとめて把握する「という意味で、これが少し変化して「概念」「考え方」という意味合いになっていきました。「コンセプション(Conception)」はそこから「受胎」、つまり「新しい命を(共に)授かる」ということを意味します。その「プレ(Pre=前)」ですから、プレコンセプションケアとは「妊娠前のケア("con" なので、女性はもちろん、男性を含めた夫婦やその周囲まで含まれる概念です)」のことです。これは単に「妊活」を意味する言葉ではありません。「将来の妊娠を考えながら、自分たちの生活や健康に向き合うこと」であり、思春期以降のすべての女性やカップルにとって、自分らしい人生を描くための「ライフデザイン」そのものといえるかもしれません。
最近のブログでも書きましたが、韓国・中国に加えて日本も含めた東アジアでは出生率がかなり低いレベル(合計特殊出生率 0.7-1.1 くらい)になっています。そうなると珍しくないのが「(いわゆる)高齢妊娠・出産」です。この流れもあって、「ケアするのは "妊娠してから" ではなく "今"」という流れで、特に産婦人科領域においては「妊娠してからケアを始めるのでは、遅い場合がある」という臨床における現実を痛感することが多いことから、こういった考えが出てきているようです。
もちろん日本の周産期医療は世界トップレベルで、死亡率や合併症の低さは際立っています。しかし、これをさらに改善し、赤ちゃんの健やかな成長を守るためには、妊娠前の準備が欠かせません。たとえば以下のような知見がすでに知られています。
◉先天異常のリスク回避: 赤ちゃんの体の基礎が作られるごく初期、お母さんの血糖値など、基本となる検査値が適切な範囲で維持されていないと、先天異常のリスクが高まるといわれています。
◉将来の病気を防ぐ:たとえば妊娠前の母体が極端に痩せすぎていると、赤ちゃんが小さく生まれやすくなる(小さく生まれた赤ちゃんは、将来大人になった時に糖尿病や高血圧などの生活習慣病になるリスクが高いこと)など、体型などについても「適切は範囲」があり、なるべくその範囲内での体格キープを保つようにすることが薦められます。
妊娠を考える前から介入し、健康状態を整えておくことは、女性にとって(予期せぬ妊娠があってそのまま生むことになっても)安全なお産のリスク回避だけでなく、お子さんの「一生の健康」を守ることにもつながるといえます。具体的にみていきましょう。
まずは BMI(体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m))で、体重とホルモンバランスには密接な関係があります。これまでのデータでは、BMIが 19 以下、または 26 以上で月経不順が増加することが示されています。特に現代の日本女性に多いのが「痩せすぎ(BMI ≦ 18.5)」です。20〜30代女性の 20% が低体重、という現状がありますので、体重の確認は励行したいですね。
これに関して、昨年日本肥満学会などにより新たに「FUS(Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」という症候群の確立が発表されました。18 歳から閉経前までの女性で、低体重や低栄養を背景に不調を合併している状態を指します。BMI 18.5 未満が参考値とされ、新しい健康課題として注目されています。
ほかにも「骨密度・栄養バランスとサプリ・ワクチン・隠れた疾患のチェック」などについても大切なことがあるのですが、これについては長くなるのでまた明日に。
女性のホルモン動態は非常にデリケートでそれに応じた症状も個人差が多くあります。特に若い女性が社会でも家庭でも元気に過ごすことができるよう、今後もいろいろな "コンセプト" を紹介できればと思っております。