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インスリン発見の歴史と現在の偏見

[2024.09.02]

今からおよそ 100 年前に画期的な発見でフレデリック・バンティングがノーベル医学生理学賞を受賞しましたが、その発見とは何でしょうか?

答えはインスリンで、なんと発見から 2 年後のノーベル医学生理学賞授与、という異例の速さでした。そのくらい、「血糖値を下げるホルモンの発見」というのは革新的なことだったのです(ちなみに血糖値を上げるホルモンは多数あります)。

その後多数の経口血糖降下薬が利用できるようになりましたが、やはりインスリンは糖尿病治療になくてはならない治療薬のひとつであり続けています

現代診療では一般的に、未治療(初診時)の HbA1c が 10 以上、食事にかかわらない血糖値が 350 以上、経口血糖降下薬を 3-4 種類使っても血糖コントロール不良のときにはインスリン導入をお勧めしています。

インスリン導入に関して、次のようにおっしゃる方がいます。

  1. 注射が痛い
  2. 一生打ち続けないといけない
  3. インスリン使い始めたらもう寿命が長くない
  4. 低血糖が心配だから打ちたくない
  5. インスリンを使うと自分の膵臓から本来のインスリンが出なくなる

・・・これらはすべて誤解です。簡単に回答を書いておきます。1. ⇒ 現在のインスリン製剤の針はものすごく細いので感じる痛みはすご〜く軽いです。2. ⇒ 特に初診時で導入するケースですが、食事・運動・口腔内清潔保持・睡眠時間確保などを踏まえたうえでインスリンでしっかり血糖値をコントロールすることで多くが 3-4 ヶ月でインスリンを中止し、内服薬のみの管理とできます。 3. ⇒ 2. で記載したとおり、インスリンは離脱できますし、インスリンを使っている患者さんが(血糖コントロールがよいのに)寿命が短いというデータは特にありません。 4. ⇒ 低血糖はインスリンのタイプ(超速効型や持効型と呼ばれるもの)を考えて使用すれば極めてまれです。むしろ数日後に紹介するスルホニルウレア薬と呼ばれる経口血糖降下薬のほうが多いです。 5. ⇒   ステロイド薬を使うときと異なり、インスリン製剤を打ってもそれで自分の本来持っているインスリン(内因性インスリン)が枯渇するわけではありません。「インスリン注射でもらい水して自分の井戸水が枯れないように休ませる」イメージです。

当院では原則としてインスリン導入を行っておりませんが、どうしても使用しなければならない場合は BOT(Basal supported Oral Therapy: 導入時点で内服している経口血糖降下薬を続けながら効果が長く続くインスリンを 1 日 1 回だけ注射する方法です)で開始しています。ただし 1 日インスリン投与量が 20 単位としてもコントロールできない場合は責任をもって診られないので糖尿病ご専門の先生に紹介しています。

フレデリック・バンティングの写真(Wikipedia より)。49 歳の若さで亡くなったことが惜しまれます。

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