メニュー

咳止めが不足、その一因と当院での対応

[2023.10.03]
新型コロナウイルスだけではなく、2019 年まではあまり経験しなかった 8-9 月のインフルエンザの同時流行で、咳症状を訴える患者さんが多く受診されております。
 
これら感染症流行の影響で、薬の供給が追い付かず欠品となっているのが去痰剤、鎮咳剤などです。特に鎮咳剤、いわゆる「せき止め」は不足が著しく、商品名で言うとメジコン、アスベリン散、フスコデなどの処方箋を発行しても、近隣の薬局に在庫が極めて少ない状況です。このような場合、当院で発行された処方箋をもって院外薬局に行っても「その薬は出せません」と言われて困るのは患者さんです。
 
もともとこういった状況になる一因として、現在厚生労働省が推進している薬価引き下げの影響があります。ジェネリックをはじめとして医療費削減のために医薬品の価格も随分と下げられ、それにより各メーカーが安価な薬を作らない(作ってもそれに見合う対価が得られない)という流れができているからです。
 
特に現在、諸外国からの輸入に大きく頼っている様々な薬剤の原薬価格が(石油をはじめとする物価高の影響により)高騰しています。日本の医薬品はメーカーが勝手に薬価を決められない(厚生労働省が決めています)ため、原薬価格が高くなるとジェネリックとして価格を大きく下げられた医薬品を作るメーカーは売上に繋がらないため製造をひかえるようになってしまいます。鎮咳薬も 1 錠 5.7 円の非常に安価な薬ですので売上はとても小さいことが予想されます。
 
数年前の勤務医時代にも手術患者さんの感染予防に必須の抗菌剤であるセファゾリンが欠品するという事態が起こりました。このときは海外で薬品中に異物混入が起こったための欠品で、予測は難しいと思いますが、今回の新型コロナウイルス、インフルエンザなどによる各種薬剤の不足については 3 年前からある程度予測ができなかったのかと現場の医師として厚生労働省のスタッフに質問してみたい気持ちです。
 
今後インフルエンザがさらに流行する冬場に向けて一刻も早く薬の供給が安定して欲しいと願っております。
しかしながらどうしても供給が滞る場合には「西洋薬がなければ漢方薬」、ということで漢方には清肺湯・竹茹温胆湯・小青竜湯・麦門冬湯・五虎湯・柴朴湯・参蘇飲など様々な咳症状に対応できる方剤があります。ときには西洋薬よりも短時間でスッキリ治るケースも経験します。これらを駆使して当院患者さんのツラい咳症状にしっかりと対応したいと考えている院長でした。

HOME

最新の記事

患者さんをみるときも研究論文を書くときも、宝物(貴重な知見や大切なデータ)は遠くではなく自分の足元にあることが多い。
出身高校でよく言われていた「〇〇 を追え」という言葉を卒後 30 年経ってから目指してみる。
医師で作家、というのは本当にたくさんいますが江戸時代のあの有名作品を書いたあのひとも実は医者です。
人生において重大な決断をする際はそれまでにどのくらい "アソビ" があるかどうかが大事なのかも知れません。
武田薬品工業 7 代目社長ー武田 國男 に学びたい。
武田長兵衛という江戸時代の "お薬の仲買い屋さん" が創出した日本有数の薬品会社についてのおハナシ。
90 年くらい前の英国におけるひとつの問いが現在の新薬・新規医療技術確立のために必要な統計的手技法になったハナシ。
ひとのことはよく見えるものですが自分のことはわからないもので、今日も院長は遅くまで仕事をしてしまいました。
医療現場では患者さんの声を聞くことがなにより大事ですが、「ありのまま」に受け取ってはいけないこともあるコトバもあります。
2007 年に文科省が出した指針を本日初めて知り、いちど中学校くらいの英数国理社教科書をさらっとひととおり読み返したくなりました。

ブログカレンダー

2025年6月
« 5月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME