どんなことでも見るだけと実際にやってみるのとはだいぶ違います。
院長は医師になってからすぐに "医局員" になりました。医局。看護師など、医療関係の仕事をしているひとでもなにをやっているかよくわからない団体に大学卒業と同時に所属しました。あの頃はそれがアタリマエでしたので。ただ、院長が入らせてもらった医局は大変優しく厳しく何も知らない自分を導いてくださり、気がついたらまあ "いっぱし" の医師に卒後教育してくださっていました。感謝です。特に「臨床やるなら必ず同時にデータを取ってその臨床業務をそのまま解析して研究にしなさい」という、自分が入局したときの 木原和徳 先生(現 東京科学大学腎泌尿器外科名誉教授)の教えは今でもカラダに染み付いております。そのおかげで、開業した現在でもどんなに忙しくても、少なくとも年に 1 回は学会・研究会での発表をするようにしています。三つ子の魂ですね。
そんな学会・研究会に演題を提出し、実際に発表するときに必ずお世話になるのが座長。若手の頃は「座長職はなにも準備しないでふらっと来て発表者にテキトーに質問するだけで楽そうだなぁ」とか、全くもって失礼ながら思っていました。しかし、先週学会で座長を(2024 年 1 月以来久しぶりに)やらせていただき、下のような感じで改めて「座長もいろいろあるなぁ」と思いました。
まず、座長は全演題(今回のポスター発表は 6 題)の要旨・抄録を事前に読み込み、内容を把握しておく必要があります。そして、発表者の所属や立場を確認して、適切な紹介コメントや質問を考えます。特に今回は「腎腫瘍関連の症例報告に関するセッション」だったので、テーマが幅広く、短時間で理解するのが難しく準備に時間がかかりました。このとき、想定質問やディスカッションの「つなぎ」を準備しておく必要があります。さらにポスター番号や演者交代時間、筆頭演者の所属施設名や名前の読み方など、地味ですが重要な事前の確認事項があります。さらにポスターセッションは広〜い会場の一角で行われますので、結構セッションとは関連のないまわりの方々の話し声などが聞こえます。そのため参加してくれている方々の集中力が途切れやすく、「面白い質問」「ためになる指摘」と思われるようなコメントを準備しないといけません。
さらにいつもそうなのですが、なかなか一般演題では質問が出ません。この、「質問・コメントありませんか?」と聞いた時の静まり返った会場の気まずさよ。ただ一方で、質問が多すぎて時間内に収拾がつかない場合もあり、この辺の調整は本当に微妙で難しい。これまで何回も座長をやらせてもらいましたが、「うまくファシリテーターとしてできた!」と実感できた経験は数えるほどしかありませんでした。
あと、今回は幸いおられませんでしたが、超有名教授が「ちょっと質問よろしいですか?」みたいな感じで質問というよりも演者への教育的指導を始めてしまうとき、座長とはいえ完全に自分が下の立場となり、ただただそのコメント最後まで聞くだけの存在に成り下がるようなときもあります。あとは自分のことを指導してくれた先生がそばで見ていたりするのも緊張します。「あいつ、偉そうに座長やってるけど若い頃は・・・」みたいに思われているのではないか、みたいな被害妄想に駆られたりして。
とまあ、かくも座長といえどもいろいろと気を回すのです。自分も演者になるときは、建設的な質問や出しゃばりすぎないコメントを心がけて少しでも座長の方を困らせないよう努めたいと、改めて思いました。
ところでたった今、昨日に引き続いて甲子園で阪神がソフトバンクに負けてしまいました。明日は一矢報いてくださ〜い!
