医学のなかでこれからもっと発展すべき領域について。
この少子化と言われる時代にもかかわらず、平成元年にはわずか 11 大学にしかなかったのに 2023 年には 295 大学にある学部(または学科)はなんでしょう。医療関連です。
答えは看護学部(または看護学科)です。2023 年 4 月時点で国公立 94 校・私立 201 校あります。院長の母校、東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)では「医学部保健衛生学科看護学専攻」として 1989 年に設置されましたので、かなり老舗のほうだと思います(最も歴史がある大学での看護学専攻は高知女子大学(現 高知県立大学)の家政学部看護学科だそうです: AI 調べ)。
こんな感じでハナシを始めた理由は、最近いくつか看護系のレクチャーを聞く機会があったからです。そこで看護関連の研究についての講演を聴きました。そのなかで感じたのが、「看護学は医学に比べて発展途上」という印象です。これは医師の「上から目線」ではなく、看護に関わる学術の先生方が「看護学がカバーする範囲を決めかねている」ような気がしたからです。
たとえば医学のなかでも "境界領域" みたいなところがあります。泌尿器科でカバーしているとされる臓器で副腎がありますが、以前行われたある全国調査では「副腎摘除の 40% くらいが(泌尿器科医ではなく)消化器外科医により行われている」という結果をみたことがあります。このとき、医学領域では「泌尿器科医 vs 消化器外科医」みたいな構図ができ、双方が切磋琢磨する、的な流れになることがあります。その結果として「副腎学」が進歩すればよいのです。
たまたまかもしれませんが、院長が聴いた看護のレクチャーでは「これは医師の領域ですので・・・」とか「公衆衛生学の分野ではこうなっていますが、看護学の立場からすると・・・」みたいな発言があったのが少し気になりました。医学というか「医療」の分野に特にボーダーはなく、自分の専門から少し外れるところであってもそういった「境界領域」の内容であれば積極的にそこに踏み込んでいく姿勢のほうがよいのでは、と勝手ながら感じました。
昭和における漢方医学の大家、大塚敬節 先生の言葉で
"術ありて 後に学あり 術なくて 咲きたる学の 花のはかなさ"
があります。これはまず "技術" があって "学問" はそのあとについてくる、ということを示しています。クリミア戦争において医療現場ではじめて「統計学」と「図表(グラフ)」を医療に持ち込んだのは看護学の祖であるナイチンゲールです。患者さんの症状を誰よりも早く把握し、患者さんの訴えを深く知る立場の看護師が今後の看護学をさらに発展させていくことを期待したいと思います。
当院には 4 名の看護師が在籍しており、どのスタッフも患者さんの訴えを傾聴することが得意です。当院から外来診療における看護研究が発表できるよう、院長として自分もサポートしてまいります。
