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たまに一念発起して「よし!運動しよう!」とか思って頑張ってしまうヒトに起こりやすい症状とその対処法について書きました。

[2025.04.23]

こむら返り。医学的には夜間下肢筋痙攣(やかん かし きん けいれん)とか言ったりします。この症状だけでクリニックに来院される方は少ないですが、メインの診療(例えば糖尿病や甲状腺疾患など)についての診察が終わろうとしたとき、"医療機関に来たついで" という感じで患者さん訴えることの比較的多い症状がこれです。「そういえば夜寝てるときに足が "つる" のがツライんです」。みたいな感じで。主にふくらはぎの筋肉が突然強く収縮し、激しい痛みを伴う現象で、通常は数秒から数分間続き、睡眠中や安静時に発生します。

主な原因として

  1. 筋肉疲労と神経機能の異常:院長も剣道をするとき、無理に相手の面を狙おうとして飛び込むと左ふくらはぎがつることがあります。普段からしている運動の動きを大きく超えるような過度な筋肉使用は控えたほうがよさそうです。
  2. 加齢による影響:加齢に伴い、筋肉量の減少や腱の短縮が進行し、筋肉の柔軟性が低下します。なるべくストレッチなどを、「鍛える運動」をしたら「ほぐす運動」を心がけましょう。
  3. 電解質異常と脱水:体内の水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど。特にカルシウムやマグネシウムが重要とされます)バランスが崩れると痙攣が起こりやすくなります(骨格筋にはカルシウムチャネルという筋収縮に重要な構造が無数にあります)。
  4. 血行不良:長時間同じ姿勢をを続けると筋組織への酸素供給が低下し痙攣が起こりやすくなります。
  5. 冷え:血流障害により 4. と同じメカニズムで痙攣が起こりやすくなります。
  6. 運動不足: これにより筋力・筋量が低下・筋疲労が起こると痙攣のリスクが高くなります
  7. 妊娠:女性ホルモン値の変動は電解質バランスの不均衡をきたし、体重増加による運動不足や体型変化による血行障害で痙攣が起こりやすくなります。
  8. 薬剤の副作用:当院でも 500 名以上の方が内服されておりますが、スタチン系薬剤というコレステロール値を低下させる薬や利尿薬による電解質バランスの不均衡が起こり、痙攣が起こりやすくなります。

などが挙げられます。

この症状、西洋薬ではなかなか対応に難渋するのですが、漢方で "多くの患者さんにすごく効く" 方剤があります。芍薬甘草湯という漢方薬で、これまでに多くの臨床経験があります。

芍薬甘草湯は、その名の通り「芍薬」と「甘草」の 2 つの生薬だけからなる非常にシンプルな方剤で、芍薬には筋肉の緊張を緩める作用が、甘草には鎮痛・鎮痙作用があり、この 2 つが相乗的に働くことで、筋肉の異常収縮を速やかに抑え、痛みを和らげることができます。漢方は「構成生薬が少ないほど即効性がある」という特徴があるので、2 つの生薬からなるこの芍薬甘草湯は、「足がつったらすぐ飲む」という、いわゆる "頓用薬" としての使い勝手がよい方剤です。あとは、これからスポーツや山登りをする、みたいな「運動前に予防的に内服する」というのがオススメです。院長も剣道の前に必ず一服しています。

よくある症状に対する特効薬について述べてみました。ただ、「これを飲めば準備運動は不要!」というわけではなく、運動する前にはしっかりとカラダをほぐすことは忘れずに行うようにしてくださいね。

イラストは Chat GPT に作ってもらった芍薬甘草湯の「ビックリマンシール的」イラスト。アタマに芍薬、右手に甘草、左手にあるのは「魔法の杖」?

 

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