尿路と並んでヒトにとって大きな "排泄路" である大腸の異常を検出するために少なくとも 1 年に 1 回この検査を思い出してください。
院長が大好きな阪神タイガースが強いですね。いや、それともセ・リーグの他球団が弱いのか。いずれにしても昨年 2024 年は貧打で苦しんだので、今年の不動 1 〜 5 番メンバーの活躍ぶりに日々勇気をもらっています。一度くらいは直接応援に行きたいのですがなかなか・・・。あと 2-3 年してクリニックの運営が少し落ち着いたらぜひとも死のロードが明ける 9 月の甲子園での連戦などを狙って夏休みを取れればいいなぁ、と思っております。
さて、そんな阪神タイガースには(現在は 2 軍におられますが)原口文仁 選手という、チャンスに強いバッターがいます。その原口選手、2019 年 1 月が大腸がんステージ IIIb であることを公表しました。「ステージ IIIb はリンパ節転移を有している状態」ということですのでいわゆる "進行がん" です。 5 年生存率は 50-70% と、決して楽観できる数字ではありません。
近年、この大腸がんが日本人で極めて増加しています。これは食生活の欧米化や運動不足・飲酒・低繊維/高脂肪食・高齢化などが関連しているといわれますが、こういった危険因子に当てはまらないケースも多く経験されます。その最たる例が 20 代を含む若年の患者さんが珍しくないということです。原口選手も発見は 27 歳でした。
大腸がんは、初期段階ではほとんど症状が現れません。進行してからようやく便秘・下痢・血便・腹痛・体重減少などが出てくるため、症状が出てから受診すると、すでに進行がんというケースも少なくありません。
では、その大腸がんを(もちろんできないに越したことはないのですが)早く見つけて早く治療するにはどうすればよいか。その答えとして手軽なのが「便潜血」検査です。
便潜血検査は、便の中に血液が混じっていないかを調べ、われわれの目には見えないレベルの微量な出血を検出するための検査です。方法はとても簡単で、採取した便の一部を専用の容器にとり、医療機関や検査センターに提出する(2 日分!)だけ。痛みも副作用もなく、大した時間もかかりません。
この検査では、大腸がんの初期にみられるわずかな出血をいち早くキャッチすることができます。また、がんになる前段階の「腺腫(せんしゅ)」という良性ポリープからの出血も拾えることがあるため、がんになる前に予防的な治療へつなげることも可能です。実際、便潜血検査によって大腸がんの死亡率を 30〜40% 程度下げることができるという論文も報告されています。
もちろん、便潜血検査には限界があります。たとえば、出血のないがんや、検査直前に出血していなかったがんは見逃される可能性があります。また、痔や出血性の腸炎など、がん以外の出血でも陽性になることがあります。
そのため、便潜血検査はあくまで「スクリーニング検査(ふるい分け)」と位置づけられており、陽性だった場合は必ず精密検査(大腸内視鏡検査など)を受けることが重要です。
先ほど若年例についてのハナシをしましたが、現在の日本では過剰検査回避の観点から、40 歳以上を対象に年 1 回の便潜血検査が推奨されています。特に大腸がんのリスクは 50 代以降で急増するため、40代からの検査習慣は大きな意義があるでしょう。また、家族に大腸がんの方がいる場合や、以前ポリープを指摘されたことがある方は、より積極的に検査を検討しましょう。「毎年この日(誕生日とか結婚記念日とか)は検査をうける!」と決めておくと「ついつい忘れ」がなくなってよいと思います。
また、便潜血検査は手軽で安価ですが、精度では大腸の中を直接カメラで観察する内視鏡にかないません。大腸内視鏡では直接腸の中を観察し、その場でポリープを切除することも可能です。一方、内視鏡は時間や費用、身体的な負担もあるため、全員が毎年受けるのは現実的ではありません。そこで便潜血検査を毎年行い、必要に応じて内視鏡につなげるという戦略が、費用対効果の高い方法として推奨されます。
便潜血検査は、「面倒」「恥ずかしい」「症状がないから大丈夫」と思って先送りにされがちな検査ですが、たったこれだけで命を守れる可能性があるのです。逆にいえば、「面倒だから」と検査を受けなかったことで発見が遅れ、命に関わるケースも現実に存在します。
毎年一度の検査を「自分の未来への投資」と考え、ぜひ受ける習慣を持ちましょう。もし陽性と出たとしても、それは「早く見つけられてラッキー」と前向きに捉えてください。
そんな院長は一応小さいながらも「組織の長」をやって「開業医は体が資本」ですから毎年内視鏡を受けています。当日の下剤がだいぶツライんですけどね・・・。
・・・明日はこの便潜血検査についてもう少し深堀りしてみます。