一生で男性の 15%、女性の 7% くらいがかかるこの疾患、もし一回でも経験したことがある方に是非実践してほしいこと。
今日も暑かったですね。熱中症を疑うような症例の患者さんも多くなってきています。ご注意下さい。
夏に増える泌尿器科疾患といえば尿路結石症です。これは発汗量・水分量・食べ物やアルコール消費量など、様々な要因がからんでいますが、今回はその予防について簡単に述べてみましょう。
夏が結石の「ハイシーズン」と言われる主な理由は以下のようです
1. 脱水による尿濃縮
汗をかく量が増える一方で、水分補給が不十分だと尿の量が減り、尿中のカルシウムやシュウ酸などの濃度が高くなります。これが結晶化しやすい環境をつくります。
2. 尿のpHの変化
脱水だけでなく、高タンパク食やジュース、ビールの摂取が多くなることで、尿が酸性に傾きやすくなり(尿はアルカリ化されると結石が予防できるというエビデンスがあります)、尿酸結石ができやすくなります。
3. 食生活の乱れ
暑さからさっぱりしたもの、冷たいものばかり摂取しがちですが、意外と塩分や動物性タンパク質、プリン体の摂取量が増える傾向があります。これも結石のリスク要因です。
・・・これらを踏まえたうえでの尿路結石予防についてどう考えればよいかが以下のようです。
1. こまめな水分補給
- 目安は 1 日 2 リットル以上(ただし心疾患や腎疾患がある人は医師に相談)・・・と言われますがなかなか毎日この量を摂るには相当量の運動による発汗などが必要ですのでそれなりに達成が難しい数字です。
- 水・お茶・経口補水液などがベスト・・・これもねぇ。アイスとかジュースとか、夏場は摂りたくなりますので完全に守るのは難しいかも。
- カフェインやアルコールは利尿作用があるため、補給としては不適・・・ただこれも「仕事中のコーヒーがないと集中できない!」とか言われるのである程度はまあ許容してしまうケースが多いかも。
- 就寝前にコップ一杯の水を飲むことも有効・・・ただしこれにより夜間多尿や夜間頻尿をきたす/悪化することがあるのでほどほどに。100-150 cc 以下くらいか。
2. 適切な食事管理を行う
- シュウ酸の多い食品(ほうれん草、ナッツ、チョコレートなど)の過剰摂取を控える・・・目安が難しい。ほうれん草にカツオブシ、ナッツにヨーグルト、チョコレートに牛乳など、カルシウムを多く含むものを同時に摂ると結石のリスクは少し減らせます。
- 動物性タンパク質の摂取量を適度に保つ(1 日 60〜80 g 程度を目安に)
- プリン体の多い食品(レバー、干物、ビールなど)を控えめに
3. 規則正しい生活と運動習慣を取り入れる
- 長時間の座りっぱなしは血流や代謝の低下を招き、結石形成のリスクに
- 適度な有酸素運動(ウォーキング、サイクリングなど)は代謝促進とストレス軽減に有効
尿管結石の再発率は 1 年以内で 14%、5 年以内で 35%、10 年以内で 52% というデータがあります。まあ約半数の人が 5〜10 年以内に再発するわけです。もし尿路結石を患ったことがある方は再発予防のために以下のことを知っておいて下さい。
- 結石の成分分析(リン酸マグネシウムアンモニウム結石 ← ある種の細菌(プロテウス・ミラビリスとかいう細菌が代表)の感染をしっかり治療することで予防につながる、尿酸結石(←尿のアルカリ化のためのクエン酸内服などで予防につながる)を行い、個別の対策を取る
- 尿検査や血液検査、CT 検査などで体質を評価し、生活指導につなげる
尿管結石は突然激痛をもたらす「痛みの王様」。とくに夏場は汗による脱水や生活習慣の乱れから結石ができやすい季節です。
日頃から水分補給、バランスの取れた食生活、適度な運動を意識することで、予防と再発防止が可能です。「一度痛い目を見たからこそ、もう繰り返したくない」──そう感じた方は、ぜひ今日から予防を始めてみてください。
ちなみに尿路結石は生涯で男性は 7 人に 1 人(15%)、女性は 15 人に 1 (6.7%)人が経験するくらいありふれた疾患です。午前 4 時過ぎ(昨日のブログ参照)に脇腹が痛くなったら是非受診を!