書き終わってから「今回のハナシは警察とか弁護士とかいれずに医師だけに限ったほうが説得力があったな」と感じるブログになっていました。
昨日「警察官・弁護士・医師は社会のヒーローになるべきではないのでは」みたいなことを述べました。ドラマでも医師がヒーローとして描かれることに違和感を覚えるのですが、その理由を昨日簡単に述べました。それは「これらの仕事は社会で "人の不幸" を仕事にしている」ところがあるから。もちろん警察でも免許証更新とか、弁護士でも成年後見や医師でも厚労省の医系技官など、いろいろな仕事があるのは承知していますが、ここでは「職業名を聞いて多くのひとが思い浮かべる仕事」について述べています。
ここでひとつ疑問が。なぜ洋の東西を問わず、こういったセーフティーネットみたいな職業が “ドラマにおけるヒーロー扱い” されやすいのか?
ひとつは、「安定=正義」という文化が根強く残っているせいかもしれません。特に日本では、(あるドラマで女性医師がものすごい自信満々で言っていた決めゼリフのように)“ワタシ、失敗しないので” が喝采を浴びるようなところがある社会です。
でもこれって、やっぱり特に医師をヒーローとして祭り上げるには少し違和感です。医師は患者さんの診療で世間でいうところの「チャレンジ」はできないからです。
「◯◯ 手術の成功率は 20% だぞ!まだのその手術をしたこともないオマエが 本当にあの患者にその術式を選ぶのか!?」
「ああ、たとえ可能性が低くてもオレが執刀医としてあの患者を助けてみせる!!」
・・・とか言って手術してしまうのはドラマの世界だけ。現在の術前カンファレンスなら
教授か部長はもちろん、病院の倫理委員会みたいな組織で「その手術は施設として施行するのを認められません」と言われて終わりでしょう。
「失敗するかもしれないけど、ワクワクする」。こういった感じで突き進める職種こそが(特に)子どもから憧れられるヒーローであるべきと思うのです。
もちろん医療や司法、警察は社会にとって必要不可欠です。でも、それはあくまで後方支援の役割。たとえばサッカーで言えば、われわれは「ゴールキーパー」みたいなもの。本当の主役は、ゴールを決めるストライカー(=未来を切り拓く人)のはずです。
昨日も述べましたが、最近、小学生の「なりたい職業ランキング」に「ユーチューバー」「ゲームクリエイター」などが上がります。大人からは「けしからん!」なんて声もありますけど、個人的にはむしろいい傾向だと思っています。なぜなら彼らは “誰かにワクワクを届ける仕事” をしているからです。医者がヒーローになる社会よりも、夢を届ける仕事がかっこいいと言われる社会のほうが、健全なような気がします。
医師の仕事も、社会を下支えする大事な役割。でもそれはあくまで「夢を見せる人たちの舞台を守る」仕事。われわれが黒子(くろこ)として粛々と仕事をしている状態こそがよい社会なのかもしれません。
さらにいうと、ヒーロー扱いされるには、医師の仕事ってかなり泥臭い。夜中に呼び出されて、患者さんのために汗まみれになる。なかなか診断に至らずに患者さんやその家族に怒鳴られることもあるし、若手の頃は手術がうまくいかずに上級医に執刀を取り上げられて落ち込むことだって、山ほどあります。
でも、だからこそ、患者さんが病気や怪我になって人生で転ぶようなときに、起こしたり、サポートしたりできる優しさが身につくのかも知れません。そういう “縁の下のかっこいい脇役” が、医師であり、弁護士であり、警察官なのではないかなぁ、と。
社会にとって必要な医師とは、「主役になりたい」ではなく、「誰かをサポートしたい」タイプなのではないか。そういう想いで、院長は日々の診療しています。なにか健康上のことがありましたらなんでもご相談ください。その場でスマートな回答はできないかもしれませんが、泥臭くいろいろと調べながらベストと思われる提案をさせていただきます。