ほぼ毎日院長が好きで食べているもので男性で罹患数 No. 1 の がん を予防できればうれしい。
院長の朝はほぼ 100% 米飯で始まります。パンはほとんど朝食としては選択しません。理由は簡単で、「腹持ちが悪いから」です。 1 日 2 食で過ごして 8:00 に開院してから 13:30 までノンストップで診療をしているのでご飯くらい腹持ちがよくないと保たないのです。このときたいてい一緒に食べる食材があります。納豆です。妻の地元が茨城県だから、というわけではなく昔から納豆が好きだからです。今回は納豆に含まれるイソフラボンに関する話題提供を。
イソフラボンは、大豆に含まれる成分で、ある泌尿器科におけるメジャーな病気の予防効果があると言われております(どの病気からは後ほど)。大豆は「畑の肉」と呼ばれ、良質のタンパク質ほか多くの栄養素を豊富に含みます。そのため大豆は何千年もの昔から、日本を含むアジア圏の食文化では多く用いられ大切にされてきた歴史があります(季節の節目に大豆を食べることが習慣となった節分などがその一例)。
イソフラボンという成分の存在自体は、古く 1930 年代には知られていましたが、その構造や健康効果についての研究・応用開発が 1990 年頃から世界中から注目され加速度的に広がっていきました。その中で示されたのが「イソフラボンを多く摂っている集団は前立腺がんの発症率が低い」という疫学的データです。ややこしいハナシは省きますが、「前立腺がんは男性ホルモンが活発に分泌されている状況だと進展する」特徴があるため、女性ホルモン的な動きをする物質は前立腺がんの発生に対して「抑制的に作用」します。
イソフラボンはいわゆる「植物エストロゲン(女性ホルモンに似た働きをする成分)」に分類されますので前立腺がんの予防になります。特に日本人がよく食べる「豆腐・味噌・納豆・きなこ」なんかに多く含まれています。ですので日本人は、疫学調査でも示されていますが、前立腺がんの発生率が欧米人よりも一般的に低くなっています。さらに、ある日本の大規模疫学調査では、大豆製品をよく摂る男性ほど、前立腺がんのリスクが有意に低いという結果が出ています。特に注目されているのが「エクオール」という物質で、これは、イソフラボンが腸内細菌によって変化してできる代謝産物。エクオールは前立腺の細胞に働きかけ、がん細胞の増殖を抑える作用があるといわれています。
ただし、注意点もいくつかあります。ひとつは「すべての人がエクオールを作れるわけではない」ということ。腸内環境によって、イソフラボンをうまく代謝できない人もいます。日本人の 50% 以上はこの “エクオール産生能” があるといわれていますが、逆にいえば半分は納豆を食べてもその恩恵を受けづらいということ。大豆製品を食べるとお腹がゆるくなりやすいヒトは食べすぎないようにしましょう。また、イソフラボンは摂取量(食べ物のバランス)が大事です。女性ホルモンに似た働きをするわけですから、過剰摂取は避けましょう。イソフラボンは 1 日だいたい 75 mg くらいが適量と言われております。これは「納豆なら 2 パック」「豆腐なら 1 丁」「豆乳なら 400 cc」「きな粉なら大さじ 8 杯」くらいとなります。ほかの食材とバランスよくとりましょう。最後に、アタリマエのことですが、イソフラボンだけで前立腺がんが完全に予防できるわけではありません。 定期的な検診(PSA検査)や、生活習慣の見直し(運動・禁煙・飲酒控えめ)と合わせて取り組むようにしてください。
かつては男性のがん罹患数 10 位くらいだった前立腺がんが、現在は安定の罹患数 1 位を長いこと突っ走っています。前立腺がんはあまり目立った症状が出現することが少ない “地味の臓器”。症状が出るころには病気が進んでいることもあるため、予防と早期発見が重要です。
その第一歩として、納豆 + 豆腐味噌汁 + ごはん を明日からの食生活に是非取り入れてみてください。院長は明日の朝も納豆食べて(ちゃんと歯磨きしてから)診療に臨みます。