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どのように手術を学んだかーその 2(前日に眠れない夜を過ごす)

[2024.04.14]

突然ですが、皆さんは翌日手術を控えている外科医がどのように過ごしていると思われますでしょうか?

ワイン片手に優雅なディナー?英気を養うためにゴルフ練習場?愛犬とともに河川敷を散歩?

いろいろなパターンがあると思いますが、自分が全身麻酔手術を週 3-4 件以上やっていた頃は「不安で不安で布団に入ってもなかなか寝付けない」という感じでした。

なにが不安だったのでしょうか。ものすごく簡単に一言でいうと「不測の事態」です。それは突然起こるかもしれない自身の体調不良ということもあるでしょうし、助手で入ってくれる先生とのちょっとした連携ミスの可能性もあり、ときには手術患者さんのアレルギー体質などによる突然の出血などもあり得るでしょう。

・・・それほどにヒトの体にメスを入れる、というのはプレッシャーのかかることでした。

そのため前日に必ず皮膚切開から体位確保、開腹操作(腹腔鏡やロボットならポート創と呼ばれる小さなキズの穴開け)から途中の剥離から摘除したあとの臓器収納・再建、さらには閉創までの手技をひととおり想像し、確認しながら寝る、という「儀式」を行っていました。

ただ、このとき必ず思い浮かぶのが「過去に経験した合併症やうまくいかなかった記憶」です。ときにはそれがかなり強く心に引っ掛かり、23:00 に布団に入ったにも関わらず 3 時や 4 時まで眠れない夜を過ごす、なんてこともしばしばありました。

ただ、そのように「深く深く考え」た夜の翌日でも「手術がある」というプレッシャーのおかげか、5 時台に自然と目が覚めました。慣れってすごいですね。ただしそのようなときは手術が無事終わることが多かったです。考え抜いた手術をやっているかもしれません。そして当然ながらその日は早々に帰宅して泥のように眠りました。

20 年以上手術に携わり、多くの若手を教育する機会に恵まれました。残酷ですが「手術に向いている、センス・筋がよい術者」と「この先生は手術にあまりかかわらないほうがよいのでは・・・」という外科医のタイプ、というのは厳然としてありました。院長は正直言って手術を学び始めた頃は上司からおそらく後者と思われていたのではないかと愚考しますが、努力に努力を重ねて幸い泌尿器手術に関しては平均的な医師よりも相当多数の経験を積むことができました。

そして開業して 1 年、今年度から不思議な御縁で外科治療で全国的に有名な東海大学において、若手泌尿器科の先生と手術をする機会をいただきました。微力ながら神奈川県西部の泌尿器科診療レベル向上のために尽くしたいと思います。

明日はもう少し具体的な手術技能向上のために行ったことについて述べてみますね。

写真は 2019 年頃で画像診断部で仕事をしているところです。手術前日にシミュレーションソフトを使って切除プランを考えています。コロナ以前は当たり前だった「医療機関内でのマスク不着用」ですが、今みると少し新鮮です。

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