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男性にもある更年期障害ですが、それに関連して初診で来られる方がときどき内服しているおくすりについてつれづれに語ってみます。

[2025.05.24]

女性がなにか体調不良を感じたらどの診療科を受診するでしょうか?咳やノド痛なら内科ですが、下腹部の鈍痛などであれば婦人科に行くことが多いと思います。そのくらい、「女性=婦人科」というのは強固に結びついております。

一方、男性は。院長が専門とする泌尿器科が男性下半身の症状(陰部痛や排尿時違和感など)を診るのですが、婦人科より「恥ずかしい」と思うひとが多いようです。実際、院長が開業を検討しているときも、ある先輩医師が「ビルテナントを借りて泌尿器科をやるなら 1 階だと患者さんがクリニックに入るところを見られて恥ずかしくなっちゃうから少し上の階、まあ 3 階より上がいいんじゃない?」とか言われました。・・・まあ結局ビルテナントではなく土地建物付の当院を前院長から買い取ったカタチになったのですが。

ただ、泌尿器科の中でも専門分野というのは分かれています。その分野というのは比較的多くて 悪性腫瘍(がん、このなかでも外科系と内科系に分かれている施設もある)、排尿障害、尿路結石症、小児泌尿器科、女性泌尿器科(尿失禁など)、性感染症など多数あります。

そのなかで最近いろいろなヒロミさんや清水宏次朗さんなど、芸能人のなかでも「自分もかかっている」と公表するようになってきたのが「LOH 症候群」、いわゆる「男性更年期障害」です。

この症候群は非常にざっくり言うと、しっかりと症状を問診して男性ホルモン値を測定、男性ホルモン補充療法やときに漢方薬、サプリメントなどで治療します。全国規模の疫学調査はないのですが、泌尿器科医として外来をやっていると週に数名はこのことで悩んでいる or 診断がつかずに困っている 方が来院されますので、相当数の患者さんが潜在的におられるのではないかと思います。

この症候群と診断された方はたいてい AMS スコアという自己採点で結果がわかる質問票に回答しています。現在世界中で LOH 症候群において最も広く使われている質問票なのですが、この 15〜17 問目(全部で 17 問中最後の 3 つ)が男性の性的アクティビティに関する質問になっており、これら 3 つの点数が低い傾向にあります。

そこで医療機関を受診する前に ED に対する治療薬をすでに内服されている方がそれなりにおられます。この ED に対する治療薬として世界的に有名なのがファイザー社のバイアグラですね。

バイアグラ(一般名:シルデナフィル)は、1998 年に米国食品医薬品局(FDA)から勃起不全(ED)治療薬として承認され、発売されました。発売からわずか 3 か月で 4 億ドルの売上を記録し、瞬く間にブロックバスター製品(従来の治療体系を変えるような画期的な薬効をもつ新薬で、売上が世界的にも高い薬品のこと)となりました。2008 年には年間売上が約 19 億ドルに達し、2012 年にはピークの 21 億ドルを記録しました。

バイアグラは発売から 17 年間、毎年 10 億ドル以上の売上を維持し、ファイザー社の収益に大きく貢献しました。発売から 18 年が経過した 2016 年でも、ジェネリック医薬品との競合がある中で、約 16 億ドルの売上を記録していたそうです。

しかし、米国でバイアグラの特許が切れると、ジェネリック医薬品の登場により売上は減少しました。2019 年には売上が 4 億 9700 万ドルにまで減少しています(それでもたいしたものですが)。

このバイアグラ、開発の経緯が面白いので明日はそのことについて触れてみたいと思います。大きな創薬がひとつの失敗から生まれた好例です。

ちなみにファイザー社の薬品セールスマン(いわゆる MR)とその恋人としてアン・ハサウェイが出てくる映画で『ラブ & ドラッグ』があります。この中ではバイアグラやゾロフト(抗うつ薬、日本名はジェイゾロフト)を売るために奔走する当時の MR が面白く描かれており、(ストーリーはあまり好きではありませんでしたが)接待優待なんでもありの 90 年代ズブズブの 医者-MR 関係を垣間見ることができて面白かったです。 

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