異臭は最も原始的な感覚が教えてくれる危険信号ですので感じたらすぐに警戒しましょう。
われわれの生活を支える石油ですが、今月、それに関連する事故がありました。
NHK の報道によると、「5 月 17 日午前、大阪 堺市の沿岸部にある ENEOS の石油精製工場で、石油を精製する過程で出る有毒な硫化水素のガスが漏れる事故があり、ガスを吸った従業員の男性 3 人が搬送されました。警察によりますと、このうち 1 人が死亡、1 人が意識不明の状態だということです」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250517/k10014808491000.html)。
原因は石油を精製する過程で発生する有毒なガスである "硫化水素" が配管のつなぎ目から漏れ出ていたということです。搬送された 3 人は配管の点検作業中にガスを吸ってしまったということです。
「硫化水素(りゅうかすいそ)ガス」。これは温泉地でも発生する無色の腐卵臭(この言葉自体が硫化水素を表すために生まれた言葉と考えられている)で、今回のように死亡事故につながる有毒な気体です。空気より重いため床の近くにたまりやすいため、貯留してしまうとちょっと怖い物質です。
低い濃度なら鼻がツンと刺激されるくらいですが、高くなると頭痛や吐き気、呼吸が苦しくなったり、今回のように時には命に関わります。ただ、低濃度であれば温泉特有のあの香りは特に健康上の問題になることはなく、好きな方も多いと思います。
ただ、温泉から湯気と一緒に硫化水素がふわっと出てきて、閉まった部屋や狭い空間にこもってしまうと、ガスが溜まって危険になります。特に露天風呂の近くや蒸気浴の場所などでは、注意が必要です。
今回のガス漏れ事故は、換気が十分でない場所でガスがたまってしまい、作業員の方が中毒で亡くなる、というものでした。これは温泉に限らずですが、閉鎖的な空間でガスが充満しないようにすること、そして異臭や体調の変化にすぐ気づくことが大事です。嗅覚は最も原始的な感覚ですが、しばらくすると「慣れて」しまうので、おかしなニオイを感じたらなるべく早く「うん?」と思うことが重要です。
この硫化水素とミステリを結びつけた作品が、いったいどれだけベストセラーを書くんだこのひとは、の 東野圭吾『ラプラスの魔女』です。そのなかの重要人物としてある医師が出てきます。大学脳神経外科教授の 羽原 全太朗(うはら ぜんたろう)。彼は脳神経細胞再生研究の第一人者として登場し、「画期的な手術」を行います。以前にもブログで書いたことがありますが、医師は医療に関する小説を読むときにどうしてもリアルな現場を知っているので「アラ探し」をしてしまうもので、この作品中でもどうしても突っ込みたくなるところが多々あったのですが、エンターテインメント小説としてはいつもどおりの面白い作品に仕上がっています。
こんなふうにいくつもの物語を紡ぐことができるというのはいつもながらにスゴイことだなぁと思う、夏を感じる 5 月でした。