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新幹線に乗ると思い出す患者さん

[2024.10.04]

本日山形新幹線に乗りました。さすが世界に冠たる輸送電車。大変快適に移動できました。

新幹線に乗ると思い出す患者さんがいます。院長が 30 歳になる手前の頃のことでした。そのときはがん研有明病院でレジデント(若手で非常勤契約により病院に雇用される身分)をしていたのですが、当時がん専門施設での治療を希望して遠方から来院される患者さんで残念ながら病状が進行してしまった方がおられました。

患者さんの希望としては最期を自宅で迎えたい、とのことでした。われわれ医療スタッフとしても是非ご帰宅を、と思いましたが非常に状態が不安定でできれば入院継続が望ましい、とう状況でした。

地方で新幹線が停車する駅から徒歩 3 分くらいのところがご自宅(空港からはだいぶ遠い)でしたので、ご家族が JR に確認して状態が悪い方の移動について許可をもらい、席は 6 名分を確保する、となりました。このとき JR からの条件が「医療従事者が付き添うこと」ということでした。

当時の自分の上司が「病棟主治医のお前がついて行ってやれ」ということで自分が付き添うことになり、東京駅から 3 時間くらいだったか、ご家族といっしょに血圧計や点滴を持って付き添いました。幸い移動中は状態が落ち着いており、無事帰宅することができました。

その際ご家族が近隣にホテル(ありがたいことに夕食・朝食までついていました)を用意してくれており、(自分はとんぼ返りで帰るつもりだったのですが)1 泊してきてよいか上司に確認すると「そういうことなら明日は有休でいいからたまにはゆっくりしなさい」と言われました。泊まりの準備は全くしないで行ったのですが、パソコンも小説もない(当時はスマホではなかったのですが携帯で本を読むことはできませんでした)状況が、逆に休息を取るには好都合でのんびりできました。

その患者さんは帰宅後、(自分としては 1 週間ほどで厳しいかと思っていたのですが在宅診療担当の先生のご尽力もあり)比較的穏やかな状態を維持してご家族と 3 週間ほど一緒に過ごされたあとに亡くなられたと、後日ご報告いただきました。

自分はといえば、1 泊して次の日に少し観光をして夕方帰院したところ、「昨日はゆっくりしていいと言ったが今日は早く帰って来い」と言われて心中「しまった!調子乗りすぎた!」と反省したことを今でも思い出します。

写真は山形新幹線です。

 

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